第7話 本気

俺は少し余裕が出てきたので、戦闘の最中だが「ステータス」と呟く。



若槻 翔

レベル60

HP 1562/1562

MP 3241/3241

SP 0

筋力 1211

魔力 1121

敏捷 1111

耐久 1213

器用 1217



それぞれの数値が、モンスターを倒すたびに少しずつ上昇していく。

ちゃんと「能力奪取」の能力が働いているようだ。


ところで。

ここで、俺の最初のステータスを思い出そう。

確か、


若槻

レベル0

HP 20/20

MP 0/0

SP 0

筋力 10

魔力 9

敏捷 7

耐久 9

器用 7



というような感じだった。


あらゆるステータスの数字が、今は初期ステータスの軽く100倍以上になっている。しかし、俺の体感ではそこまで上昇した気がしない。


スタントマンもびっくりみたいなアクションはできるようになっているし、動体

視力やら何やら、感覚系も強化されているような気もする。


……だが、もっといけるはずだ。


ステータスが実際にどう反映されているのかはわからない。だが、流石にステータスが100倍になっているにも関わらず常人の数倍程度の身体能力しか得られないということはないはずだ。


つまり、俺は無意識に力をセーブしている可能性が高い。あるいは、ステータスを持っていなかった頃の感覚で動いてしまっているか。


––––それを引き出すには……


俺は跳び回りつつ、呼吸をととのえていく。


––––今!


「はあ!」


敏捷と筋力のステータスをフルに使うイメージを持ち、俺は地面を思いっきり蹴る。


すると。


急に、世界がスローモーションになった。

スローになった世界で、ただ1人、俺だけが通常のスピードで動けている。


チラリと澄火を見ると、ステータスを持っているはずの澄火の行動も遅くなっていた。

澄火の体から発される紫電の動きも少し緩やかになっている。


まさに、昔の漫画の加速装置を使ったかのようだ。


俺はそんな世界で、ロボット軍を斬って回る。そして、ステータスの出力を制限するイメージをすると、世界のスピードが元通りになった。


その瞬間、どっと疲れが湧いてきて、思わず崩れ落ちそうになる。

ここ数日忘れていた、肉体的な疲労の感覚。


今までステータスが上がり、疲れない体になったなどと思っていたが、どうやら本気で動いてなかっただけのようだ。


カシャンカシャンとロボット軍が機械の破片となって地面に崩れ落ちる。

澄火が振り返り、少し驚いたような目でこちらを見てきた。


俺はサムズアップして、澄火に応える。


と、ガシャンガシャンと新手が来た。


まだまだ戦いは終わらぬようだ。俺は呼吸を整えて刀を握り直し、ロボット軍に相対した。

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