第3話 北海道
そしてやってきたのは北海道、新千歳空港。少々不安だったが、きちんと針は石狩ダンジョンの方角を指し示している。
三角測量的な思考から、石狩ダンジョンでほぼ確定だ。
俺は空港の外に出て、ぴっぽっぱっとコールする。
「お世話になっております、若槻です。新千歳空港に到着しました」
「……了解です!早速お迎えに参りますので、現在の位置をお伺い願いますでしょうか?」
昨日予約を取るべく石狩ダンジョンに連絡したところ、なんと自衛隊の車で送迎してくれるとのお返事をいただいたのだ。
日本に探索者は約一万人いるが、その全員がダンジョンの探索を生業にしているわけではない。
倶利伽羅さんのように、別の仕事をしている人の方が多いのだ。
それに、ダンジョン探索を生業にしている人も一週間に一回とか二回とかの低頻度で潜っていたり、一つのダンジョンにのみ特化している人の方が多い。
つまり何が言いたいのかというと、探索者というのは意外と人手不足に悩まされている職業だということだ。
結果として、割と放置気味になってしまっているダンジョンも多く、石狩ダンジョンもその一つになっていた。
前回探索されたのは、なんと半年前だそうだ。探索されていないダンジョンほど災害が起きやすいと言われているので、かなり危険な状態である。
よく何の災害も起こらなかったものだ。
電話で指定された場所まで行くと、そこにはびしっと構えた自衛隊の制服を着た男性が2人と女性が2人立っていた。
澄火もいるので、女性の自衛官の方も駆り出されたのだろう。
自衛隊の方々は、俺たちの姿を認めると、ビシッと敬礼してくれる。
思わず見惚れてしまうほどにかっこいいが、周りにいる人がすごい好奇の目で見てくるのでやめてほしい。
「そこの人、写真撮るのやめて」
と、澄火が目ざとくスマホを取り出してこちらを撮ろうとしていた人物を睨む。
自衛隊員の人たちが慌てて駆けつけてきて、俺たちをかっちりとガードするような布陣になる。
気圧されたように、カメラを構えようとした人は気まずそうにそっぽを向いた。
「行きましょう」
自衛隊員の1人がそういうと、俺たちを車へとエスコートしてくれる。
何も号令をかけていないのに、全員の足並みが揃っていた。
俺たちが乗る車は、テレビでよく見るジープだった。
––––意外と綺麗だな。
その感想が顔に出てしまったのか、自衛隊員の女性が苦笑しながら声をかけてくる。
「汚いと能率が下がりますので、使用後は徹底的に掃除するようにしているんですよ」
「……なるほど」
「匂いが染み付いたら嫌なので、徹底的に除菌、消臭もしています」
澄火も物珍しそうに車内を見回しつつ入ってきた。
ドアが閉まり、いざ出発である。
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