第2話 さし示した方向は

くるくるくるくると羅針盤の針がものすごいスピードで回転する。


「……ん?」


俺は羅針盤が手のひらに吸い付いてくるような感覚を得る。

……というより、羅針盤が俺から何かを吸い取っているのか。多分、エネルギーとしてMPを吸い上げているのだろう。


そのまま、いつ終わるんだと思いながらも10分ほど待っていると、針が一方向を指し示して停止した。

大体、北の方を指し示している。


俺はそばにあったダンジョンの位置が描かれた大きな日本地図を取り出す。


スマートフォンから読み出した自身の現在位置を中心とした正距方位図法の地図と照らし合わせながら、羅針盤の針が示す方向へと指を走らせる。


「……石狩ダンジョンか?」


すると、北海道にある石狩ダンジョンに行き当たった。

データベースで概要を確認すると、どうも機械系のモンスターが多数出現するダンジョンのようだった。

過去にはそこそこ大きなダンジョン災害を起こしたものの、付近にいた現在日本ダンジョン探索者協会序列一位の女性、『天使』によって鎮圧された経歴を持つ。


「決まりかな?」


俺は早速、北海道への飛行機のチケットを取ろうとして、ふと後ろを向く。


「澄火、今日はどうする?ダンジョン行くか?」

「んー、今日はお休み……がいい……」


澄火はそういうと、くしくしと甘えるように額を擦り付けてくる。


「……なら明日にするか」


ここ二日やばい戦闘を繰り広げたので、俺も流石に少々精神的な疲れが溜まっている。


今日はそれを癒す時間に充てることにしよう。


俺は手早く飛行機のチケットを取ってから、澄火をヒョイっと抱えてベッドに行く。


せっかくだし、俺も二度寝することにしよう。色々と放り出したままだが、後で片付ければいい。


俺は澄火をベッドに横たえてから、パジャマに着替えて澄火の横に潜り込む。


そして、澄火を守るようにぎゅっと抱きしめてやる。


すると、澄火の顔がふにゃふにゃと安心し切ったような表情に変わった。


「お休み、澄火」


俺はそう澄火に声をかけて、目を閉じた。

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