第12話 罠

順調に階層を突破していき、あっという間に11階層までやってきた。


ちなみに、ここまで俺はボス戦を除きほとんど戦っていない。

全て澄火が相手の間合いの外からの一撃で始末してしまった。


宝箱も一つも見つかってない。こちらは俺たちがあまり探索をしていないというのもあるのかもしれないが。


とはいえ、ここまではあくまで前座。


ダンジョンの11層からは難易度が数段上がる。いわゆるダンジョン中階層というやつだ。

推奨レベルは50……つまり、今の俺たちより5低い程度。


「行こ」


澄火は特に気負った様子もなく、てくてくと先へ歩く。


「ああ」


俺も答え、いつでも二刀を抜けるように構えながら先へと進む。


第11階層は、第1階層と同じような、洞窟が続いているタイプの階層だ。


そのままウロウロと洞窟をマッピングしつつ彷徨うこと一時間。


「何もないな……」


次の階層へと続く階段も、魔物も、宝箱も、鉱山も、何もない。


「……んー?」


何か、根本的な間違いを犯しているような気がする。


「あ」


澄火が何かを発見したようで、くいくいと俺の袖を引く。


見ると、そこには……なんというか、いかにもな感じの魔法陣があった。

円形で、内部には見たこともないような文字や図形が不規則かつ規則的に配置されている。そしてなぜかぼうっと紫色に光っている。


「罠、かな?」

「十中八九、そうじゃないか?」


俺はスマホを取り出して、日本ダンジョン探索者協会のオフラインデータベースを開く。

罠のデータを漁っていると、目の前にあるやつと同じもののデータを発見した。


「あー……どうやら、罠の一種だ。階層の機能を抑える役割を持っていて、踏むとその反動で階層が魔物と宝箱で溢れかえるらしいぞ」

「魔物……宝箱……」


澄火は何ら躊躇なく魔法陣を踏み抜いた。


「うおい!」


俺は慌ててスマホをリュックに放り込み、刀を引き抜く。魔法陣が輝きを失い、どこかからガチンという音が響いてくる。


「おいおいおい……」


ずおおとあちこちで黒いモヤのようなものがより集まったかと思うと、宝箱や魔物へと次々に変化する。


「そい!」


俺は二刀を操り、魔物を次々に切り裂く。

当然の如く血があたりに飛び散り、その血が辺り一帯……つまり、11階層全体の魔物を引き寄せる。


「…………」


俺は無言で魔物を斬り続け、なんとか階層の魔物を全滅させることに成功した。

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