第10話 ステータス

若槻

レベル55

HP 1000/1000

MP 2100/2100

SP 0

筋力 866

魔力 832

敏捷 821

耐久 831

器用 811



全ステータスが800を超えた。

そして、MPの最大値が大きく伸びている。スキルが取れない現状では、あまり使い道がないが。


「あ!」


と、澄火が珍しく歓喜の声を上げる。


「スキルレベルが上がった!」

「本当か?」

「ん。レベル2……だって。紫電を纏えるようになる……って書いてある」

「纏える?」


澄火は目を閉じると、「帯電」とおそらく技の名前なのであろう単語を呟く。

パリッと静電気が弾けたような音がした。


「…………?」


それ以外、特に何も起きない。


「成功したのか?」

「…………ん」


澄火はゆっくりと目を開ける。

その瞳の中で、紫の電光が荒れ狂っていた。


澄火はその状態を維持したまま、無造作に拳打を繰り出す。


すると、ぴしゃあんという音がして、雷が前方の空間を打つ。とてもかっこいい。


再びぱりっという音がして、澄火の瞳の中の電光が消える。


「結構MPの消費がきつい……」


常時スキルを展開しているわけだし、それはそうだろう。


そういえば、澄火のユニークスキルのレベルが上がっているなら、俺のユニークスキルもレベルが上がっているかもしれない。


俺はステータスを右にスワイプし、スキルステータスを呼び出す。



ユニークスキル

能力奪取Ⅰ



残念ながら、そんな甘い話はなかったようだ。スキルステータスには、前見た時と同じく「能力奪取Ⅰ」と書いてある。

一応説明文もクリックしてみたが、前と全く同じ表示が出るだけだった。


俺は少し悲しい気持ちになりつつステータスを閉じて、左右の二刀を確かめる。


前回はダンジョンの入り口で戦闘したので、ダンジョンの本体へ入るのは初めてだ。


ダンジョンには、誰が作ったのかは不明だが、魔物の他にも色々なギミックがある。


主に知られているのは、「罠」「宝箱」「鉱山」の三種類だ。(日本ダンジョン探索者協会webサイト、探索者専用ページより)。


「罠」はその名の通り、探索者を阻む罠だ。

低階層ほど多く、高階層になればなるほど減る傾向にある。

「宝箱」はその名の通り、中にお宝が入っている箱のことだ。こちらは逆に、高階層になればなるほど増える傾向にある。


もちろん、両者共に例外はあるが。


最後に「鉱山」は、資源が発掘できるポイントのことである。

大抵は一種類しか発掘できなく、またしばらく経つと消えてしまう……が、しかしその価値は莫大なものがある。


何せ、純粋な希少金属が一気に100kgとか取れるのだ。


鉱山の発見によって時の政権の支持率がなぜか上昇するということもあり、見つかったら行政とは思えない迅速性で一瞬で掘り尽くされる。


もちろん、発見者の報酬もかなりのものがある……が、見つかることはまあそうそうない。


ともあれ、俺たちが見つけようととしているのは、「宝箱」だ。

聞けば、序列入りしている探索者のほぼ全てが、ダンジョンからドロップした品を装備して戦っているらしい。

稀に半ばアイドルとして活動する探索者が、スポンサー企業の作った物を装備していたりするが、ごく少数だ。


俺たちも、上を目指す以上は落品や宝箱品(業界用語)を手に入れる必要がある。


「じゃ、行こうか」

「ん」


俺たちはダンジョンの奥へと歩き出した。

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