第5話 頼れるあの人

ランジェリーショップで真っ白に燃え尽きた俺は、気を取り直して次のお店に行こうとした。

しかし、どこへ行けばいいのかさっぱりわからないことに気づく。


メンズの服でさえよく知らない俺が10代女性のブランドを知っているわけがない。


俺は頼れるあの人に助けを乞うことにした。


若槻 お疲れ様です

若槻 澄火に似合いそうなファッションブランドを知りませんか?


またもや神速で既読がついた。

そういう特殊能力でも持ってそうだ。


熊川 知ってるよ

熊川 なになに?プレゼントするの?

若槻 ええ、まあ……


あながち間違ってはいない。


熊川 まずはサンライズ。それから、いにしへの風。意外とLightning Crashあたりも似合うそうだね


俺はネットでそれぞれ検索をかける。

幸いにも、どのお店も近くにテナントがあるようだ。


「サンライズ。いにしへの風、Lightning Crash……あたりがおすすめらしいです」

「ふむ。もしかして、熊ちゃんのおすすめかい?」


熊ちゃん……熊川さんのことをそう呼んでいるのか。


「お知り合いなんです?」

「もちろんさ。これでも序列入りしているからね」

「序列入り……?」


序列なんてものが存在するのか?


「うむ。日本の探索者トップ100をそう総称するんだ。主に稼いでいる金の量が基準になっているな」

「へえ……」


いかにも資本主義的な評価方法だが、確かに一番効率的なのかもしれない。

実際に戦って序列を決めたりしたら、色々と問題がありそうだ。


っていうか、そのトップ100に入っているのか……すごいな。


「まあ、探索者は日本に10000人ほどしか存在しないから、それほど誇れることではないかもしれんがな……さあ、早速サンライズへ行こうか」

「は、はい」


俺はサンライズのあるテナントへ急ぐ。


サンライズは、清楚系のファッションを扱っているブランドだった。


俺はいきなりそこでつまづいた。


当たり前っちゃ当たり前だが、何を買ったらいいのかさっぱりわからない。


俺はスマートフォンをポチッとつけて、熊川さんに助けを求める。

……なんか頼りすぎな気もしなくもないが、町の平和を守ったということでここは一つ勘弁してほしい。


すると、瞬く間におすすめのリストが送られてきた。

と、追加のメッセージも送られてきた。


熊川 もちろんリストのやつはある程度澄火ちゃんに似合うはず。でも、ちゃんと自分で澄火ちゃんのために選ぶんだぞ!


要約すると、手抜きしないでちゃんと自分でも選べということらしい。


俺はグルグルと30分近くもテナントを彷徨った挙句(店員さんからは不審者を見るような目で見られた。そういえば、今日は平日だ)、今話題とどこかで聞いた覚えのある、制服風ファッションを1セット購入した。


いにしへの風はゴリッゴリのロリータファッションのブランドだった。


「どうかな?」


咲良さんは試着して見せてきたが、悲しいほどに似合っていなかった。

ロリータファッションのゆるふわな雰囲気を、持ち前のワイルドさが粉々に打ち砕いている。


俺は目線で店員さんに助けを求める。


「うーん、お客様は体格や雰囲気が当ブランドには合っていないようですね……よければ姉妹ブランドにご紹介いたしますよ」


すると、店員さんが気付き、ささっとフォローしてくれた。


俺は感謝し、またの来店を決意しつつ、なんとなーく澄火に似合いそうだと思ったゴスロリを一枚追加で購入してそこを出た。


Lightning Crashは今時の女子高生を体現したようなブランド。

俺は三軒目にしてようやく店員さんに助けを求めるという技を覚えた。


追加で購入したのは、ダボっとしたズボンのようなスカート?に、ふんわりとしたカーディガンのような服。


これが最近のトレンドらしい。いくつか勧められたが、これが一番似合いそうだと判断した。


その後もいくつか小物や生活必需品を購入し、俺と咲良さんは帰路についた。



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