第7話 枕

「ん……」


目を覚ますと、昨日と同じように澄火に抱き枕にされていた。

栗色の髪を流し、すやすやと心地良さそうに寝息をたてている。


こっそりと澄火の腕の中から抜け出すと、もぞもぞと澄火が動き出した。

しばらく蠢いていたかと思うと、きゅっと俺が使っていた枕を抱きしめ、再びすやすやと寝息を立て始める。


起きたわけではなく、抱き枕がなくなったので本能的に探しただけのようだ。


俺は澄火が起きないうちに手早く着替え、部屋の外に出る。

お互いに裸を晒した(一緒にお風呂に入っただけなので、厳密にはこの言い方は正しくない気もするが)とはいえ、着替えを見せるのは少々恥ずかしい。


リビングまで行き、スマホをいじりつつ今日の予定を立てていると、「うーっ」とよくわからない唸り声をあげながら、澄火がやってきた。

なぜか枕を抱えていることから、まだ半覚醒状態といったところか。


「おはよう」

「……う」


澄火は眠たげな目をこちらに向けてくる。


「……シャワー浴びてきたらどうだ?」

「……そうする」


澄火はフラフラとお風呂の方へと行く。


俺は澄火がシャワーを浴びているうちに朝ごはんを作っておくことにして、キッチンへ向かう。


昨日のうちに澄火がスーパーへ行って食料品を買い込んでくれたので、それを活用する。


トーストにベーコンエッグ……という、お決まりの洋朝食を用意し終わると、ちょうど澄火がお風呂から出てきた。


さっぱりしたようで、覚醒状態だ。


そして、今日のファッションは、昨日俺が買ったモノクロのゴスロリ。


結構な枚数の服の中から、なぜそれを選んだのかは謎だ。

ともあれ、俺の予想通り、ゴスロリは澄火にとても似合っていた。どこかミステリアスな雰囲気ととてもマッチしている。


澄火は席につくと、朝食を食べ始めた。


「澄火、今日の予定だけど……」

「…………どこかに行くの?」


澄火はもきゅもきゅごくんとちゃんと飲み込んでからそう言った。


「ああ。山梨にある、山梨ダンジョン……そこに向かおうと思う。難易度は俺らのレベルよりちょっと下ぐらいだ」

「……ん。私は大丈夫」

「そうか。もう新幹線のチケットは取ってあるから、朝食を食べて準備したら早速行こうか」

「……ん」


澄火は肯定の返事をする。


「よし」


俺は朝食を食べ終わってから、寝室に戻ってリュックを持ってくる。

水上さんからもらった二刀を昨日買っておいた刀袋(もちろん、本来は竹刀を入れる用途のものだ)に入れたら、もう準備完了だ。


澄火もすでに準備を済ませていたのか、とてとてとやってきた。


「準備完了」

「よし。行くか」

「……ん」


俺たちはマンションを出た。

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