第12話  赤鬼

そして、終わりはあっさりとやってきた。

魔物の群れが、さーっと波を引くように引いていく。

いや、というより恐怖に怯えて……?


「……ぐっ」


瞬間。俺は何かに吹き飛ばされた。

慌てて空中で体勢を整えて着地して迎撃を試みる。


「はぁぁぁ!」


気迫とともに俺は姿さえも捉えられぬ速さで動くモンスターに向けて二刀を振る。

しかし、その一撃によって破壊されたのは俺の刀だった。


刀が粉々に砕け、俺は再び吹き飛ばされる。


俺をフォローするように紫電が迸り、俺に追撃をかけようとしているモンスターをを押しとどめた。


「悪い!」

「大丈夫」


俺は一旦星野のそばまで退き、予備の刀を掴む。


やや小柄な赤い鬼。

中学生くらいの身長しかなく、筋肉もそれほどついているわけではない。

だが、その中に暴力的なエネルギーが感じられる。


––––あれが、俺を吹き飛ばしたモンスターだ。


俺はそう直感し、二刀を構える。


すると、あたかも俺に呼応するように、魔物もどこからともなく2本の刀を出現させた。


ほのかに青みがかった輝きを持つ刀と、赤みがかった輝きを持つ刀。

よく見ると、二振りともに刀身に不思議な紋様が刻まれている。


一目で業物とわかる凄みを感じさせるそれを握り、赤鬼はこちらへ二刀を構える。


そして、ふっと姿が掻き消えた。


––––右!


俺は半ば直感で攻撃を回避して、カウンターの一撃を入れる。


しかし、赤鬼はそれを回避すると、もう一方の刀で斬撃を放つ。俺はそれを、何とか両刀で受け止めた。

ぴきっと嫌な音が刀から鳴る。


俺は頬に冷たい汗が流れるのを感じる。


「紫電」


紫の電光が迸り、赤鬼を囲む。

しかし、赤鬼は強引に突破してきた。わずかに痺れたその隙を狙って、俺は斬撃を繰り出す。


「かはっ」


焼けつくような痛みが脇腹に走る。

カウンターをもらった、と気づいた時には俺はすでに地面に倒れ伏していた。


からんからんと二本の刀が転がる。


どくどくと血が流れ出してきて、俺の体から力が抜けていく。


赤鬼はそんな俺を見下ろす。

そして、遠くからやってきた紫の電光を煩わしそうに避け、そして星野に向かって突進攻撃を仕掛ける。


「星野!」


俺は反射的に、紫電を放っていて反応できていない星野に飛びついて無理やり攻撃を回避させる。

しかし、避けきれずに俺も星野も斬撃をもらってしまった。


俺たちは揃ってごろごろと転がり、そして隔壁にぶつかって止まった。


「けっ……かい」


星野が最後の力を振り絞り、俺たちの周りに紫電の結界を作る。

さっきの赤鬼を囲んだ結界より強力なものらしく、赤鬼も突破することはできないようだ。


「……星野……すまん……」

「ん……」


星野はきゅっと俺の手を握ってくる。

俺はもう、握り返す力すら発揮することができなかった。


すーっと意識が遠くなっていく。

生暖かい血の感触も、星野の息遣いも、全てが遠くなっていく。


「星野………」


そして、俺の意識は闇に閉ざされた。























「よくがんばったな、小僧ども」


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