第9話 雷帝

「……どうする?」


一際大きいモンスターは、巨体のためか、そこまで歩くスピードは速くない。

MPを回復しつつ、作戦を立てるぐらいの時間はありそうだ。


「……最大火力で焼き切る?」

「それしかないだろうな」


俺はぐるぐると思考をフル回転させる。


「……いっそ、あいつらを突破してダンジョンの奥にいかないか?」


現状、俺も星野も武器がない。

確か、ダンジョンの奥には、そう言った武器や防具なんかが発掘できる場所があるはずだ。


「やめておいた方がいいと思う。遭難して帰って来れなくなる可能性の方が高いし……それにこれ」

「…………?」


星野はガサガサと死体から落ちたドロップアイテムを漁る。


そして、刃渡25cmほどの、一振りのナイフを取り出した。銀色のシンプルな刃で、持ち手にはぐるぐると布が巻かれている。


正当な理由なく持ち歩いたら銃刀法違反になりそうな長さだ。


歯があちこち微妙に欠けていて、あまり品質は良くなさそうなものの、今はとてもありがたい。


「……ん」


星野は剥き出しのままのナイフを渡してくる。どうやら、鞘は一緒にドロップしなかったようだ。

俺は少し微妙な気持ちになりながら受け取る。


試しに、星を描くように虚空を切り裂いてみる。

動きに無駄があるせいか、少々痛みを感じたものの、増加したステータスのおかげかかなり速く振れた。


「……よし」


俺はナイフを構え、星野の攻撃を待機する。

数秒後。


「……雷帝」


そんな星野のつぶやきと共に、ダンジョンに轟音が鳴り響く。

警告もなかったので、耳を塞ぐことなどできず、キーンという耳鳴りが響く。


そして、モンスター軍のかなりの部分がバタバタと倒れた。

ひときわ大きい5体も、一時的にではあるが倒れたようだ。


「俺が出る」


俺はそう星野に言って、猛然と駆け出した。

狙いは大きいモンスターの首だ。


「はあ!」


気合いと共に首に薙ぎ払いの攻撃を仕掛ける。

星野の紫電で痺れていたのか、巨体のモンスターは全くの無抵抗だった。


ステータスのおかげか、スパッと首が切れ、ブシュッと紫色の血が噴き出てきた。


油断していた俺はそれをモロに被ってしまう。

もし血が強酸性とかだったら、この時点で終わっていた。


俺は改めて気を引き締めなおし、残りの魔物を次々と処理していく。


……そして、次の波がやってきた。

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