第8話 第三波

「……おいおい」


俺は思わずそう言ってしまった。


第三波は、狼と赤い小鬼の混成軍。

その数、合計で約100。


そしてなお悪いことに、ポロポロと俺の持っていた棍棒が崩れ落ちた。


周りを見渡すと、小鬼の死体が消えて小さな魔石に変わっている。


さっき赤い小鬼から奪い取った棍棒がサラサラと崩れ落ちたように、ダンジョン内で出た魔物の死体、そして魔物が身につけていたものは時間経過で崩れ落ちてしまう。


その時、魔物の一部が残ることがあり、それが重要な資源となるのだ。


中でも、魔石は最もポピュラーであり、国が集中して管理する資源の一つだ。


魔石はエネルギーの結晶体だ。そして、加工を加えることで、熱や光など、さまざまな形でエネルギーを引き出すことができる。


それを利用して、日本では電力の大半がこれによって賄われているとまで言われている(正式な数値は公表されていない)。


確か、日本ダンジョン探索者協会は体積によって買い取りをしていて、この小さい魔石だと……一つ1000円と言ったところだろうか。


俺はそんな魔石を拾い上げ、ぶんと投げつける。


ステータスによって俺の肩も強化されているので、結構なスピードで飛んでいく。

そして数秒後、パシャっと血飛沫が一箇所から上がった。


どうやら、一匹殺れたようだ。


「星野、MPは?」

「まだ回復してない。一応、回復速度上昇のスキルは取ったけど、まだレベル1だから」


なるほど……スキルか。

ユニークスキルの影響でスキルを取れない俺には無縁の話である。


俺はそこらへんに落ちている魔石を使って攻撃を加えつつ、ステータスを開く。



若槻

レベル5

HP 78/78

MP 45/45

SP 0

筋力 40

魔力 31

敏捷 38

耐久 40

器用 38


ステータスの数字が、軒並み数倍に伸びていた。初期値が0/0だったMPも上昇している。

もっとも、現状では使う手段は全くないし、スキルが取れないので、これからも見つかる気もしない。


本当に、このデメリット勘弁してほしい。


混成軍が近づいてきているのを見て、俺はステータスを閉じる。


そして、見様見真似のファイティングポーズを取った。

俺は、さっきのステータスの数値を思い出しながら全力で地面を蹴る。


自分でも驚くほどのスピードで体が飛んでいく。ギリギリだが、何とか自分の動きに反応して敵の武器をもぎ取ることに成功した。


そしてそのまま、敵の中心でそれを振り回す。ステータスが上がったおかげで、ある程度はゴリ押しでできそうだ。


後ろからの的確な星野の援護もあり、混成軍をなんとか始末することに成功する。


流石に俺は疲労を感じ、荒い息をつく。


「次来るよ」


と、俺のそばまで星野が来た。

電撃によって服が焼けこげて、芸術的な模様を形作っていた。


俺はダンジョンの奥を睨む。

今気づいたが、ダンジョン内は一定の光度が維持されているようで、通路奥の行き止まりまでここから見える。

太陽の光は当たってないはずなのに、ふしぎだ。


「大きいね」


さっきまでは俺たちより小さいモンスターばかりだったが、今回のは俺たちの倍くらいの身長を持った奴らが5体、そしてその足元を取り巻くように大量のモンスターがいた。


……ここからが本番のようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る