第8話◆十日後にやらかすグラン&巻き込まれるアベル――八日目
昨日はタルバにフィギュ……人形の製作をお願いした後パッセロ商店までひとっ走りして布を買ってきた。
布の他にレースとか刺繍糸も。
裁縫のことも女の子の服のこともよくわからないので、店にいたキルシェとアリシアに色々教えてもらった。
あ? え? えーと……そうそう、三姉妹のために可愛い着せ替え人形でも作ってあげようかなって思って?
べべべべべべべ別に変なことには使わないよ。
そ、そうそう、三姉妹が雨で外に出られない日でも退屈しないように?
などと怪しまれないようにちゃんと事情も説明してきたから、美少女人形で着せ替えごっこをして遊ぶお兄さんとは誤解されていないはずだ。
着せて溶かすだけだから、お人形ごっこではないのだ。
というわけで昨日からずっと自室に籠もって裁縫作業。
嗜み程度の裁縫スキルはあるが、そこまで得意というわけではない。
まぁいい、この機会に裁縫のスキル上げもしてやろう。
ははは、器用貧乏のギフトのおかげで複雑ではない服なら作れるぞぉ!
服のデザインは冒険者風。
そうだよなぁ、スライムに服を溶かされるならやっぱギャル冒険者風だよなぁ?
本来冒険者の服は肌をあまり露出しないものだ。
魔物の攻撃も怖いが、周囲の植物や虫も危険である。ブッシュに突っ込めば植物の枝や棘が痛いし、何よりもダニが怖すぎる。
多少の露出は装備品の付与や薬剤などでカバーできるが、たまーにある特殊な装備以外は、肌の露出は控え目にするのが冒険者の常識である。
ちなみにその特殊な装備というのは、遥か昔の魔法大国で流行っていたという、大事な部分しか隠していないビキニタイプの防具である。
魔法効率が非常に良いとかそんな理由で防具面積はすごく狭く肌の露出の多い防具だが、ビキニ部分に付与された防御効果で肌が露出しても攻撃はもちろん、植物の棘からも、小型の虫からも身を守ってくれるのだ。
すごく浪漫に溢れ、見かけると俺のやる気も溢れてくる防具だが、少ない面積で何も付けていない箇所も付与をして魔力でカバーするため、高級な素材と高い付与技術が必要となりコスパが悪く、あまり見かけることはないのが残念だ。
いつか俺も付与技術を磨いて、素材に糸目を付けずハイスペックでえっちなビキニアーマーを作ってみたいと思っている。
もちろんそれは職人としての探究心であり、けっしてスケベな理由からではない。
おっと、ついビキニアーマーに心が揺さぶられてしまった。
そんなわけで今日は人形の服作り。
ははは、人形用なので植物の棘もダニも関係ないから、可愛く露出を増やしちゃうぞぉ。
ヘソ出しと太ももの絶対領域は必須だな。
そうそう、ショートパンツに伸縮素材で作ったピタピタオーバーニーね。
トップスはノースリーブでぷにぷに二の腕かなー?
もちろん脇ち……うわっ!? 何だよアベル、いきなり覗き込むとびっくりするだろぉ!?
ていうかなんで俺の部屋の中にいるんだよぉ!?
え? ノックしたのに返事がなかった? 昼ご飯の時間を過ぎても出てこないから心配で様子を見に来た?
部屋から出てこないから昼飯はアベルと三姉妹で作った?
ごめん、ちょっと裁縫に夢中になってた。
うん、食べる。たまには他人の作った飯もいいなぁ。ありがとう。
え? これ? ななななななな何も変なものは作っていないぞ!
ただの人形の服! そう服! 人形を使っての検証用!!
これは新しい製品開発のための検証のためなのだーーーー!!
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