第12話 帝国商人との話し合い

 私が経営している菓子店シェトレボーの今後についてを考えるときに、頼りになるであろう商人のイングルさんに会いに行く。


 王都にある彼の商店を訪れて、面会を申し込むと今すぐに会って話せるとのこと。応接室へ通されて、パトリックと一緒に待っていると、すぐにイングルさんがやって来た。


「お待たせしました、シャルロッテ様」

「私の方こそ、突然お伺いして申し訳ありません」

「いえいえ! 先日もお世話になりましたし、例の商品のおかげでウチも大繁盛ですから。いつでも来ていただいて構いませんよ」


 イングルさんは、にこやかに微笑んでいる。彼との関係は良好で、今までに色々と取引している商売仲間。


 どうしても帝国にシェトレボーの商品を持っていきたいと取引を持ちかけられたのだが、鮮度の問題などで他国への輸出は断っていた。それでも諦めず、何度もお願いしてきたイングルさん。


 彼の熱意に負けて特別に、帝国の商人であるイングルさんにシェトレボーの商品を取引することに決めた。


 商品の輸出には細心の注意を払ってもらい、帝国でも商品を欲しがっている相手にまで無事送り届けてもらっている。問題も起きていないので、安心して取引を続けてきた。


 彼との取引がキッカケになって、保存が利く新たな菓子商品の開発を行い、それが成功したりしている。


「それで、今日はどういったご用件で?」

「はい、実は折り入って相談がありまして」


 私はイングルさんに、厳しい現状について話した。王国内での営業を禁止されて、シェトレボーの営業許可も取り消されてしまうことを。


「なんと!? それは大変ですね」


 話を聞き終えたイングルさんは深刻そうな表情をした。彼は腕を組み、眉間に皺を寄せながら考え込む。


「それで、以前お話した帝国へのお誘いの件について。今も有効でしょうか?」

「もちろんですとも! 我々は、貴女が帝国に来てくれるのを大歓迎しますよ。帝国でシェトレボーを営業できるように私共が、全力でサポートさせていただきますね」


 前から何度も誘ってくれていたのに断ってしまった。それなのに、状況が変わって困ってしまったから提案を受けようだなんて。図々しいと思われるかもしれないと、不安があった。けれど、快く受け入れてくれたイングルさん。


 やはり、この人に相談して正解だった。


「ありがとうございます!」


 私は頭を下げてから、お礼を言った。それから、彼とシェトレボーの移転に関する打ち合わせを長時間行った。かなり満足の出来る内容だったので、正式に契約を交わすことに。


 商人イングルさんの助力を得て、シェトレボーは帝国へ移ることが決定した。

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