第11話 至高の逸品 ※ハルトヴィヒ視点
シェトレボーという菓子店について、更に詳しく調査するように命じた。
どうやらシェトレボーは、数年前に営業を開始した比較的新しいお店らしい。それなのに、もう既にユークイナ王国では絶大な人気を誇る有名店になっているそうだ。
あれだけ高品質な菓子が、平民でも購入して食べることが出来るそうだ。それだけでも凄いことなのに、その人気ぶりを王国の貴族が噂する程なのだとか。他国に居る俺の耳にも情報が入ってくるほどだから。本当に、羨ましいな。
リメルルカ帝国でも店を出してもらえないか交渉してみたところ、ダメだった。
遠く離れた場所でスタッフの教育やら品質管理するのが難しいからという理由で、断られてしまったのだ。
おそらく、シェトレボーの店主が王国の令嬢というのも関係しているのだろうな。しかも、彼女の婚約相手が王子だという。余程の事情がない限り、他の国へ行くことさえ難しいだろう。
イングルが言っていた通り、帝国に呼び込むのは非常に困難である、ということを改めて思い知った。
ここは無理に迫って、シェトレボーの店主と関係を悪化させるようなことはしたくない。上手く付き合いながら、どうにか出来ないものか方法を探っていく。慎重に。
自分達で作ってみるのは、どうか。そう考えてシェトレボーに専門家を送り込み、研究させてみた。どうにかして、レシピを明らかにできないかと試みた。
「いかがでしょうか?」
「うーん。これはこれで旨いけれど。やはり何か、ちょっと違うな」
残念ながら、そう簡単に上手くいくものではなかった。試しに作らせてみた菓子を食べてみたら、シェトレボーの物とは違っていた。
見た目や味も似ていると思う。だけど決定的に、何かが違ったのだ。その何かは、俺には分からない。
材料も作り方も研究によって突き止めたらしい。派遣した専門家たちは、素晴らしい働きをしてくれた。それでも、同じものを作り出すことが出来なかった。あれを超えるような菓子を作り出すことも出来ない。
何か特別な技術が必要なのかもしれないな。シェトレボーの者だけが知っている、特殊な製法があるかも。
王国では、シェトレボーの模倣店が増えているそうだ。でも、そのような店は人気が出ていないらしい。俺も、何店舗かの商品を取り寄せて食べてみたけれど、やはり満足できなかった。なんとなく、人気が出ない理由も分かる気がする。
シェトレボーを知っている者は、本物を知っているので。どうしても比べてしまうのだろう。それで、模倣では満足できない。俺も同じ気持ちだった。食べられるならシェトレボーの商品を食べたい。あれは、唯一無二の菓子だった。
諦めきれない。どうにか帝国に呼び込むことは出来ないだろうか。常にタイミングを狙っていた。
そしてようやく、そのチャンスが訪れたようだ。
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