第9話 お得意様のご依頼 ※とある商人視点

 ある日、ハルトヴィヒ様に呼び出されたので会いに行くことに。彼は、我が商会の一番のお得意様であり、最優先するべき重要人物。重要な仕事の最中だったとしても後回しにして、彼の用事を優先しなければいけないぐらい。


「お呼びでしょうか、ハルトヴィヒ様」

「よく来てくれた、イングルよ」


 ハルトヴィヒ様は、とても上機嫌な様子で私を出迎えてくれた。さて今日は、どんな依頼をされるのだろうか。


 ある程度は予測している。彼は甘い物が大好きで、今までに何度も各地から珍しい甘味や果物などを取り寄せてほしいとお願いされてきた。そして今日も、それ関連の依頼だろうと思っていた。


「とんでもございません。それで、御用とは?」

「うむ、実はな。ユークイナ王国にあるシェトレボーというお菓子店に行ってきて、そこで販売している商品を調達してきてほしいのだ」

「了解しました」


 私は考える間も開けずに、すぐ返事をした。わざわざユークイナ王国まで行って、指定されたお店で商品を調達する必要があるな。


 主に帝国で活動している私は、王国にあるシェトレボーというお菓子店については把握していなかった。知らないということは最近できたのか、もともと知名度が低いお店なのか。それを探すことから始めないといけないかな。


 少しだけ面倒だが、ハルトヴィヒ様の依頼を断るなんて考えられない。すぐ行動を開始しよう。




 ということで早速私は、旅の準備を済ませてユークイナ王国へ向かった。まずは、シェトレボーという店を探す必要があった。王国にあるという話だけ聞いて、詳しい場所について把握していない。だが、探し始めてすぐにお菓子店の場所が判明した。


 王都を目指して進んでいた旅の道中で、立ち寄った町の人々からシェトレボーの話を聞くことが出来た。


 どうやら、王都に店舗があるらしいこと。最近、王国内で有名になっていること。非常に美味しいお菓子が販売されていることを教えてもらった。


 シェトレボーは最近、王国で有名になったお菓子店らしい。そこへ行って、商品を調達してからハルトヴィヒ様に届ければ、仕事は終わり。予想していたよりも簡単に終わりそうで安心した。


 しかし、相変わらずハルトヴィヒ様は甘い物に関する情報を仕入れるのが早いな。別の国で話題になっているお菓子店まで把握しているなんて、流石としか言いようがない。独自の繋がりが沢山あるのだろう。甘い物好き、という欲望を満たすために。


 王都に到着すると、すぐに目的のお店を発見することが出来た。大盛況の様子で、行列が出来ていたから。


 これは、商人として交渉する場を用意して、正式に取り引きする必要がありそう。


 その前に、一般客として一度お店の商品を購入して確かめてみようか。どうやら、シェトレボーは誰でも商品を購入できるみたいだから。並んでいる人々に混じって、私も列に並ぶことにした。


 しばらくして、ようやく私の順番がやってきた。商品のラインナップはかなり多いようだ。価格もお手頃な値段だな。どれを買おうか迷って、一番人気らしいケーキを購入することに決めた。


 何事もなく無事に商品を購入することに成功して、私は味を確かめてみた。


「うまい!」


 思わず声が出た。味はとても良い。酸味もあるが、非常にバランスの取れた甘さがある。砂糖をふんだんに使っているようだが、商人としてはあれ程の低価格で出して大丈夫なのかと心配になるほど。ちゃんと儲けは出していると思うが、かなり品質が高い。ちらっと観察した限りでは、店内のスタッフの動きも優秀だった。


 人気が出るのも頷ける出来栄えだった。


 これは気合を入れて、シェトレボーのオーナーと向き合う必要があるな。これから長い付き合いをしていきたいから、相手に嫌われないのが大事だ。ハルトヴィヒ様の求める商品が手に入るように、努力しよう。


 こうして私は、シェトレボーのオーナーであるシャルロッテ様と出会った。

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