　シャルロッテを呼び出して、婚約を破棄することを告げた。彼女が、僕よりも店のことが大事だと答えた瞬間に、予定していた通り破棄することを告げたのだ。

「お前との婚約は、破棄させてもらう！！」

「え？」

　一瞬だけ驚いたが、すぐに落ち着いた様子の彼女。いつものように、冷静な反応で受け止めていた。本当に、見ていてつまらない女だ。そういう部分が気に入らない。

　その後、シャルロッテの嫌な部分を言ってやった。

　貴族の令嬢が商売なんてするんじゃない。

　王族と婚約しているのに、自覚が足りない。

　そもそも、王族である僕のことを何よりも優先するべきなのに。　

　せっかくダメな部分を指摘してやっているのに、僕の話を聞いている様子がない。彼女は謝り続けるだけで、やり過ごそうとしているのが丸わかりである。

　本当に、可愛げのない女だ。もう少し、弱みを見せればいいのに強がってばかり。こんな女をパートナーにするなんて、誰だって嫌だろう。僕も嫌だと思っていた。

　最近、僕に対する周りの評価も高まってきた。どうにかして、兄から王位継承権を剥奪して、次期王に僕がなるのだ。この野望は、絶対に誰にも知られてはいけない。情報を外に漏らさない、心の底から信頼できる仲間を集める必要があった。

　そのためにも、早いうちに問題を解決しておきたい。そう考えて彼女を切り捨てる決断を下した。その考えは、正しかったようだ。こんな女を身近に置いておいたら、計画は失敗してしまうだろうから。もっと、献身的な女をパートナーに据えたい。

　シャルロッテでは、ダメだ。

　彼女の容姿は、なかなか美しい。能力も優秀であることは認めよう。色々と仕事ができるようだ。性格が悪くなければ、味方にしていたかもしれない。だけどダメだ。僕のことよりも、自分の経営する店を優先するなんてダメすぎる。それだけで、信頼できない。今のうちに、彼女との婚約を破棄しておいて正解だった。

　最後に少し、嫌がらせしてやった。

「我が国で、お前の店の営業を全て禁止する！」

「えっ！？　そ、そんな……！」

　シャルロッテの情けない表情を見たのは、これが初めてかもしれないな。彼女も、そんな表情をするんだな。今の反応が出るのなら、少しは可愛げもある。婚約関係も続いていたかもしれない。だけどもう破棄した。撤回するつもりは一切ない。

　最後に彼女の珍しい表情を見ることが出来て、スカッとした。これから先、彼女と関わることも少ないだろう。いい思い出が残って、良かったな。

　婚約を破棄すると告げられた彼女が、部屋から出ていくのを見送る。ようやく僕は自分の計画に集中することが出来そうだ。

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