第7話 移転について

「王都にある店舗を移転する、ということですか」

「そうすると、色々と大変そうだ。スタッフの移動と新しい店舗の場所探しが必要。食材の販路開拓を、一からやり直す必要もあるね。費用がかかって大変そうだ」


 ギルバートさんが顎に手を当て、考える。レオンさんは、必要になるお金のことを考えて、嫌そうな表情。皆で、お店の移転について考えてみた。


 色々と課題がありそうだった。だけど1番、有効な解決策だと彼らは思ってくれているようだ。私も、そう思う。


 エヴラール王子の影響力が届かないぐらい遠く離れている場所まで、お店を移す。だけどシンディさんは、別の国にまでお店を移動させることには反対のようだ。


「どうにかして、この国で営業を続けるのは不可能なんでしょうか? たとえば王都じゃなくて、地方に移るとか」

「この国での営業を、全て禁止されてしまったから」


 シンディさんの疑問に私が答えると、ギルバートさんとレオンさんの2人も意見を言ってくれた。


「王子に目をつけられたということは、この国で商売を続けるのは難しいだろうな」

「もし見つかってしまった場合のことを考えると、厄介だからね」

「……確かに、そうですね」


 渋々だけど、シンディさんは納得した。王国内で営業するのは、もう諦めたほうが良いだろうと。そして彼女は、私に質問する。


「この国を離れるということは、もしかして既に候補があるのですか?」

「えぇ。既に、考えている候補があるわ」

「シャルロッテ様は、相変わらず仕事が早い。それで、一体どこに?」


 候補はある。レオンさんの質問に、どう説明するべきか考えながら話す。私たちの住むユークイナ王国よりも、広大な地域を支配していてる強国。


「移転先の候補は、王国の隣りにあるリメルルカ帝国よ」

「リメルルカ帝国ですか!? 確かに、他国に移転すれば王子の影響も皆無でしょう。しかし、ユークイナ王国民の我々は帝国に受け入れてもらえるのでしょうか? 店舗の移転先を見つけられますか?」

「おそらく、大丈夫だと思うわ」


 シンディさんの疑問に、私はある程度の自信を持って答えた。


 実は、リメルルカ帝国の商人と私は、個人的な繋がりがあった。その人を頼れば、お店ごと帝国に行くことは簡単だと思う。


 その商人は、言っていた。何か困ったことがあれば、必ず連絡してくれと。お店にトラブルが発生した場合には助けると、約束してもらっていた。今が、その時だ。


 どうやら、私のお店で販売しているお菓子のファンが帝国に居るらしい。そして、そのファンというのが帝国で高い地位に就いている方だとか。


 だから、お菓子を入手できなくなったら困ってしまうと、商人は言っていた。


 ちなみに、過去に何度か勧誘もされている。帝国に来てほしいと、お願いされた。私は、エヴラール王子と婚約していたのでユークイナ王国から離れることが出来ず、断っていた。婚約を破棄された今はもう、勧誘を断る理由もない。


「とりあえず私が、その商人と話してみる。他の皆は、お店を移転するという方向で準備を進めておいてくれるかしら?」

「かしこまりました」

「了解したよ」

「承知しました!」


 3人の返事を聞きながら、私は椅子から立ち上がる。


「それじゃあ、今日はこれで解散しましょう。お疲れ様」


 話し合いが終わると、5人で一緒に会議室を出た。次の予定は、知り合いの商人に会いに行く。

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