第5話 許婚の屋敷は注文が多い②
僕達は
そこで魔央の実家に泊めてもらおうと思ったら、「女将が値段を決める」という。
一体どういうことなのか?
「
「色々なもの?」
「はい。
「ほ、ほう……」
「彼らと仲良く付き合えるのなら、宿代は安くなります。彼らがストレスを感じたり不愉快に感じたりしたら、それを女将さんに報告して高くなるのです」
う~む、予想以上に斜め上の屋敷だ。
座敷童とかポルトーガイストなんて言われて、二か月前なら信じなかったけれど、今はもう何でもありという心境に陥っているから、多分出るんだろうなぁ。
「ちなみに、最高でいくらくらい請求されたの?」
「金額としては170万円ですかね」
「170万円!?」
五つ星ホテルのスイートルーム並じゃない!?
こんなド田舎にそんな理不尽な宿があって、いいの?
「それ以上腹を立ててしまうと、部屋に放火してしまうらしくて、朝になったらいなかったというケースもあるみたいです」
僕は絶句してしまった。
さすがに破壊神が成長した屋敷だ。
やることがアナーキー過ぎる。
「……仕方ない。野宿かな……」
霊や妖怪と喧嘩することはないと思うけど、あまりにも危険過ぎる。
断って、どこか寝られるところを探そうとした途端、急に高い笑い声が聞こえてきた。
『ねえ! 遊ぼうよ』
と、背後から声をかけられる。
「だ、誰?」
これ以上ないほど嫌な予感を感じながら、魔央に尋ねる。
「座敷童の太郎君ですよ。悠さん、かなり気に入られちゃったみたいですね。ついていくかもしれませんよ」
何で座敷童に気に入られないといけないんだ!
「こうなったら諦めるであります。泊まりましょう」
「そうだね。ボクも異論なし」
何故かついてきている二人はあっさり承諾してしまった。
こうなると、僕だけ断ることもできなくなる。
仕方ない。
最果村はド田舎以上の場所なので、屋敷が全て江戸時代風の建物だ。
数分歩いて到達した『黒冥家』という表札のかかった屋敷も、また武家屋敷のような建物だった。
でも、門の前に立つと、自動ドアだったようで左右に開く。
「これだけ古い門構えなのに自動ドアなのは凄いね」
「自動ドアではないですよ。幽霊さんが歓迎して開いてくれたみたいです」
「……」
僕は携帯をこれみよがしに取り出した。
『私に用?』
良かった。どうやら千瑛ちゃんと話したいということが分かってもらえたようだ。
「この屋敷、幽霊、いるの?」
『いるわよ。人間世界で喩えるならば、大イベントがある時の渋谷スクランブル交差点かというくらい、大勢いるわね。それだけじゃなくて、かつて黒冥家に葬り去られた怨霊達も集まっているようよ』
「怖いなぁ……」
『大丈夫でしょ。幽霊は世界と世界の狭間を漂う存在。直接悠ちゃんに手出しすることはできないわ』
「そうなんだ……」
それを聞くと、一応は安全か。
『でも、誰かに憑依して危害を加えることはできるけどね』
「それって、例えば木房さんとか堂仏に?」
『えぇ。特にゴリラは霊感が強いから、すぐに憑依される可能性があるわ』
うわぁ、堂仏の連れているゴリラか。
彼に憑依されて襲われたら勝てるはずがないなぁ。
『あとはポルトーガイストに頼んで、蝋燭とかを倒すんじゃない?』
「それって、屋敷は燃えないの?」
『そうね……。とすると、霊的な炎を使うのかもしれないわね』
とりあえず、魔央の屋敷に泊まるのは命懸けだということだけははっきりした。
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