第3話 汚名挽回の忍者達
2時間も経つ頃には、金の力は偉大だということを思い知らされることになった。
『川神聖良はチームスポンサーの幾つかがボイスターズのスポンサーにもなるという条件で、3秒で堕ちたらしいわ』
「先輩ならそうなるだろうね」
下手すると命よりもボイスターズの勝利を追い求める先輩だ。
エイマールの契約金の五分の一でも約束されたら、悪魔に魂を売っても不思議はない。
『四里泰子はエイマールの独占記事を書くという条件でワリドアラビアに行くことにしたみたいね』
彼女にとっても、記事が全てだ。ただ、真実を書くという決意を持っているから、ひょっとしたら土壇場で味方になる可能性があるかもしれない。
『山田狂恋も契約金1億ドルには逆らえなかったみたいね』
探偵事務所を開いている彼女は、何が専門なのかは分からないけれど、プロのエージェントだ。当然、契約額が全てだろう。
ということで、引き続き僕の味方になってくれそうなのは......。
「世界秩序をひっくり返そうとは、ワリドアラビアの者たちは全員抹消でもよろしいでありますね?」
目の前でジェノサイド宣言をしている木房奈詩と。
「時方悠、心配しなくてもいいよ。ネット世界は動物たちには効かないから」
堂仏都香恵の二人だけだ。
あとは、魔央と十兵衛爺さんかな。
この四人で何をすればいいんだ?
そもそも、千瑛ちゃんの話だけで相手をクロと決めつけることはできないから、証拠集めをしなければいけないけど、それができそうな人が一人もいない。
「時方様、ワタクシの抱える負け組を馬鹿にしてはいけないであります。全世界負け組協会は億を超えるメンバーを抱えているでありますから、当然、ワリドアラビアにも会員がいるであります」
「ボクも成算があるよ。アラビアには鷲や鷹が多いから、彼らを利用して秘密書類を盗み出すなんて訳ないはずさ」
二人は自信満々だけど、正直不安しかない。
ただし、残りの二人はもっとアテにならない。
世界を破壊することしかできない魔央と、色々なものを破壊できそうな以外に使い道のない十兵衛爺さんだ。
まあ、かく言う僕はというと、それすらできないから偉そうなことは言えないけど。
「......うん?」
背中をつつかれたので振り返ってみると、武羅夫の姿があった。
そうか、彼らは忍者軍団だった。忍者というと、諜報。
相手の隠している情報を盗み出すには適任ではある。
でも、武羅夫だからなぁ。
これまで、単独で何かを果たしてきたこともないし、そもそもモブキャラのごとく川神先輩に消されて復活したなんていう経緯もあるし。
それでも、武羅夫とともに8人の忍者が音もなく現れたのを見ると、かっこよさと期待感を感じさせられる。
「......分かった。武羅夫に任せるよ」
僕の言葉に、彼らは「お任せを!」とばかりに敬礼をして、また音もなく消えてしまった。
これはひょっとすると期待できるかもしれない。
そう、いつも同じメンバーばかり活躍しているなんて、ダメだ。
諜報が必要な時くらい、諜報メンバーが活躍する。
登場人物全員が輝いてこそ、話は面白くなるんだ!
『悠ちゃん、盛り上がっているところを悪いんだけど』
「うっ!? な、何の用なの?」
このタイミングで千瑛ちゃんが唐突に出てくると、悪い予感しかない。
それはすぐに裏付けられた。
『忍者達はボイスターズとワリドアラビア側の契約書を求めてカワカミコンサルタントに忍び込んだけど、監視していた川神聖良に見つかって、全員浄化されてしまったわ』
「えっ、忍者達、全員、浄化されたの?」
『えぇ、全員、浄化されてしまったわ』
「服部武羅夫も?」
『服部武羅夫も、よ』
何てことだ。
まだ100話にも行っていないのに、武羅夫は2回目の死を迎えてしまったのか。しかも2回とも川神先輩に浄化させられるとは......
忍者は闇に生きるものなだけに、先輩のような光特化型は苦手ということなのかな。
なんて言っていても仕方がない。
もう一度須田院阿胤に復活させてもらいたいのだけど、彼女も1億ドルで相手側に行ってしまったからなぁ。
どうしようか。
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