第2話 世界転覆の計画と裏切り?
千瑛ちゃんはワリドアラビアのサッカーチームが世界をひっくり返すつもりなのだと言う。一体、どういうことなのだろうか?
『この後、彼らはスポンサーとの協議に応じるわ。その際、スポンサーの人達に参考プレー集を渡すことになっているの』
有名なサッカー選手だから、確かに名プレー集はあるだろうね。
『そこから企業内ネットワークを把握したうえで、ハッカー達が攻撃して、資産やらビッグデータを盗み出すというわけ』
「何でそんなことをするの?」
『もちろん、それをお金にするためよ。彼らの選手の契約先には各国の大企業が連なっているわ。それらをまとめて攻撃したら、とてつもない額になるでしょうね』
ということは、彼らは石油マネーを元手に有名選手を集めて、そこから世界的大企業のデータ網に忍び込んで、より大きなお金を盗み取ろうというわけか。
『ワリドアラビアでは現在、数チームが金に糸目をつけない補強をしているわ。凄い選手が集まっている以上、バックアップするためにデータ会社やコンサルタントが必要になるというわけ』
確かに今日日、ほとんどのスポーツはものすごくデータ化されている。
ヨーロッパの一流リーグだと、データ会社と契約を結んでデータ収集しているらしい。今やほとんどの選手のプレーは全て解析されているとも言われていて、そういう点では、戦争とほとんど変わりがないとも言える。
『そうなのよ。彼らがやろうとしていることは、スポーツを隠れ蓑にした戦争なのよ』
千瑛ちゃんが言うのを待つまでもなく、中東地域には根強い反米・反ヨーロッパの空気がある。それは一部の国民だけでなく、上流階級も同じらしい。もちろん、彼らは国としては強くないから表向き反対はしない。
反対しているのは一部の過激派だけだ。
でも、裏では長年の恨みを晴らすべく、計画を練っていたらしい。
表向きは「サッカーで勝つために」とデータ会社やエンジニアを集めるけれど、実際にはサッカーが三で、残り七は違法活動になる。
資金を集めて、その資金で更に有名選手を連れてくる。サッカーだけではない。他のアスリートや俳優、アーティスト、とにかく有名人を多額のお金で連れてきて、結果的にはそれ以上の金を引き抜いていくつもりだという。
『気づいた時には、アメリカも西側もシャレにならないお金を引き抜かれて、で、東側と喧嘩をさせて共倒れしてくれれば万々歳というわけ』
「スター選手や俳優がいる側を疑ったりはしないということだね」
『しかも、近年では政治家も人気が欲しいから人気者にはどんどん阿っているでしょ。だから、国家のデータにアクセスできる端緒も作れるというわけ』
「恐ろしい計画だね。それが本当だとすれば、僕はどうすればいいわけ?」
『さあ……。私の関与するところじゃないわ』
出た!
何か見返りを寄越さないと絶対に動かないというチエイズム!
『私の計画には、彼らのことなんかどうでもいいもの』
千瑛ちゃんの計画というと、戦争だろうと何だろうと放置。
人間は大地を捨てて、国も捨てて、船で動き回ればいいというやつか。
『ただ、悠ちゃんは世界をまっとうな方向に持って行きたいみたいだから、一応、教えるだけはしてあげたの。ここから先はお手並み拝見ね』
「そんなことを言われても…」
ハッカーの勝負とかそういう世界になられたら、むしろ千瑛ちゃんが一番得意分野だからな。
あ、でも、千瑛ちゃんには負けるけど、
よし、須田院に連絡しよう……って、電話番号を知らないから、彼女のクロス(旧シイッター)でダイレクトメールを送るしかないか。
クロスを開いたら、ちょうど須田院のアカウントが一番上にあった。
『信じられないオファーが来たわ! ワリドアラビアのサッカーチームから年俸1億ドルでデータ解析してほしいってオファーが来たの! この天才・須田院阿胤の才能をそこまで評価しているということね!』
「……」
昨日の味方は、明日の強敵だった……。
※この中で語られていることはフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。念のため。
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