第3話 眷属②

 翌日の昼。



 どうしてこうなったのだろう。


 大学構内の空いている一室に、僕と魔央、それに木房さん、山田さん、堂仏都香恵がいる。



 三人は眷属けんぞく候補をそれぞれマシンガンと呪いの人形と凶暴な犬で脅している。


「正直に言わないと呪い殺すであります」


「死にたくないのなら、眷属であると認めなさい」


「噛まれたくないなら、大人しく認めた方がいいと思うけどなぁ」


「あ、あのさぁ……」


 僕の言葉に三人が「何?」と振り返る。


「この五人の中にいると決まったわけでもないのだし、眷属である前提みたいに話さなくてもいいんじゃないかな?」


「でも、他にいないんでしょ?」


 堂仏が魔央に尋ねた。


「はい。他に交流した覚えのある人はいません」


「であれば、この中に一人いると考えるしかないであります」


「そうよ。時方君は甘すぎるわ」


 さいですか……。



 ちなみに五人は否定しているわけではない。


 全員、「何でも言うことを聞きますから助けてください」と号泣している。


 本当に、彼らにとっては災難以外の何者でもなく、僕も胸が痛い。



 そもそも、眷属である証明をどう見出せばいいのかも分からない。


 本当にWOAは役に立たない組織だ。



 そこに電話がかかってきた。


 相手は、我秀胤十兵衛に話を聞きに行っているはずの四里泰子だ。


「もしもし、どうしたの?」


『あ、時方さん。今、電車の中でSNSをチェックしていたのですが、ちょっと怪しい話題を見つけまして』


「怪しい話題?」


『ここ一週間連続して、都内の事故が例年の三倍くらい発生していることはご存じですか?』


「そうなの?」


 事故なんて起きる時もあれば、起きない時もあるのだろうけれど、一週間連続で三倍というのは穏やかではないな。


『で、あくまで噂レベルなんですけれど、その事故の大半がワーバー絡みだという話があるんですよ』


「ワーバーが?」


 確かに、ネット記事で「ワーバーが急いで配達しようとして無謀運転をするから事故りそうになる」というような話は見た記憶がある。


 とはいえ、それは今に限ったことではない。


 ここ一週間だけ、急に増大しているということは。



「あっ!」



 僕は思わず叫んでしまった。


 とんでもない盲点だった。


 魔央と接触している人物は、本人が記憶している人物達だけではない。


 近くに買い物に行く時に応対している店員や、警備員といった人達だっているはずだ。


 魔央の場合、食事を外に食べに行くのが危険だということでワーバーに頼むことが非常に多い。


 その時、ワーバーとして運んでくるのは……


「みんな、この人達じゃない!」


 僕は叫んだ。


 全員が「えっ?」という顔で僕を見る。



 そう、魔央と一番接触することが多い人物……


 それは凄腕ワーバーの吉利真面目だ。

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