第8話 第二ラウンドは人類の幸福?
夢を見た。
僕は中学生で、まだ元気な
「今回も全教科満点だったわ」
「凄いね。千瑛ちゃんはテストは得意だものね」
そうだった、彼女はおよそ試験というものはほぼ満点だった。
「千瑛ちゃんが外国にいたのなら、一足早く高校や大学に行けるのかもね」
「それも周りが煩くて面倒くさいわ。自由が欲しいわね」
「自由?」
「そう。毎日寝て起きてご飯食べての生活にも飽きてきたわ。いっそ概念だけの存在になりたいわね。そうすれば自由になれる」
「そうなんだ。千瑛ちゃんの言うことは難しいね」
これは嫌味じゃない。その時は本当にそう思っていた。
「……」
目が覚めた。
部屋はもちろん一人だ。隣の部屋から「もうお腹いっぱいですぅ」という魔央の寝言が聞こえてくる。
あっという間の一日だった。
地獄を歩き、元祖任侠組の人達と出会い、ジャーブルソンのオクセル・ブロットを知り、そして千瑛ちゃんがいるということを知った。
この一カ月にも満たない期間が濃厚過ぎる。
果たして、これからどうなるのだろうか。
と、メールが来ていた。
差出人は……
「うわぁ」
オクセル・ブロットだ。
『我々のハッキングを打破するとわ、たいしたものです。明日以降もお楽しみに』
どうやら、まだ逆恨みをしているらしい。
僕はメールを返すことにした。
『「打破するとわ」ではなく「打破するとは」です』
すぐ返信が戻ってきた。
『君のそういういかにも日本の役人のような細かいところが気に入らないのだ! 人の頭にもとやかく言いおって!』
だから、それは僕じゃないから……
少し時間が経ってから、郵便受けにある魔央に届いた新聞に目を通す。
今日も平和なようだ。
のんびりしていると、電話がかかってきた。川神先輩だ。
まだ6時台だから早いけど、ボイスターズの試合絡みだろうか。
「おはようございます、川神先輩」
『おはよう、時方君。知らないうちに凄いことをしていたのね』
「凄いこと? 何のことですか」
『あ、やっぱり知らないことだったのね。今日発表の記者会見で、時方君の会社が世界を変えるようよ』
「世界を変える? 一体何のことですか?」
先輩の発言は全く分からないけれど、ボイスターズ以外のことではまともな人だから、何かあったのだろう。
『無料で毎分1京ワットの電力を供給するんですって』
「無料で電力を?」
やっぱり分からない。
『莫大な電力を世界規模で無償で供給するのよ。時方君が』
「僕は何もしていませんけど?」
『でも、そういうプレスリリースが出ていて、朝から世界中大パニックよ』
「え、どうして?」
何のことか分からないけど、エネルギーが安くなるのなら、それはいいことじゃないのかな。
『少しずつやっていければね。いきなり無償にしたら天変地異よ。まずこれまで資源で食っていた国がことごとく破産するわ』
「あぁ……、電力会社も潰れそうですね」
『自動車産業もね。ガソリン車は全滅。日本は電力車へのシフトを遅らせていたから、ジ・エンドね。時方君のせいで』
「だから、僕は何も知りませんよ」
『それでも、世界はそう見るのよ。このままだと、資源業界、電力業界、その他諸々から恨みを受けることになるわよ』
ようやく大変なことだと理解できた。
しかし、一体どうしてこんなことに?
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