第15話 現れた悪い奴?
また世界を滅ぼしてしまった。
本当にやりにくい世界になってしまった。
選択肢が出たので元に戻すのだけど、段々手続みたいになってきた。
そのうち使えなくなる、なんてことがあるのだろうか。
見ると、海斗が明らかに畏れ慄いている。4歳の幼児でも、今、何が起きたのかは理解したらしい。一方、母親の方はキョトンとしている。
筋尾組長はというと、啞然とした様子だ。
「......なるほど。世界が危ないというのは本当だったのか」
うなだれている。
ということは、組長にも世界滅亡は分かったらしい。
「......世界滅亡がかかっとるとなると、四の五の言うてはおれんか。どうやら、わしが出頭するしかないようじゃのう」
組長は諦めたようで、電話を手にした。水清に説明しようとするのだろう。
その時。
『ミスター・スジオ。本当に世界滅亡があったのですか?』
突然、機械音声のような声が聞こえてきた。機械音声というと、知恵の使徒かと構えてしまうけど、今回は男性の声だ。
筋尾はこれ以上ないほど不愉快そうな顔をした。
「あぁ、あんたの言う通りのようだ。ミスター・ブロット」
「ミスター・ブロット?」
『おっと、自己紹介が遅れました。私はオクセル・ブロットと申します。スウェーデンの地下組織"ジャーブルソン"のリーダーと名乗っておきましょう』
「スウェーデンの地下組織?」
そんなものは聞いたこともない。
ただ、地下組織ということは、元祖任侠組と繋がりがあるということかもしれない。
『まさか破壊神などというものが現実にいるとは思いませんでしたが、ミスター・スジオが体感したからには偽りではないのでしょう』
ブロットという男は勝手に納得しているようだが、僕にはさっぱり分からない。
『どうやら、直接日本に行く必要がでてきたようです。それではいずれお会いしましょう。ミスター・トキカタ』
くぐもったような笑い声とともに、機械音声は消えた。
一瞬、引き締まった雰囲気が緩み、元に戻る。
「ママァ......」
海斗が泣きそうな顔で母親の方に歩み寄る。逃げられた形の魔央はちょっとガッカリしているが、4歳の子供相手に世界の終わりを見せた以上、逃げられるのは仕方ないだろう。
「組長さん、さっきの人は誰なんですか? スウェーデンの地下組織なんて言っていましたけれど?」
「......昨晩、わしに一方的に連絡を取ってきたやつじゃ。ヂィズニーの休園が貸し切りによるものだと教えてくれて、団員の募集にも一方的に協力してきた」
「......筋尾組長の顔があるとしても、一日で400人を集めるのは尋常なことではないわ。今の男の組織が関わっていたということね」
山田さんが解説してくれる。何というか、君、完全に悪役だよね。
というか、今回のヂィズニーの件は、日本政府が箝口令を敷いていたんじゃないの? あちこちに漏れすぎじゃない?
「四里と知恵の使徒が知っていたのは能力を考えれば不思議じゃないけど、スウェーデンの地下組織風情にまで知られているとなると、先行きが不安になるわね」
山田さんはそう言って、近くのベンチに腰掛けた。
「わしも最初はそう思った。しかし、奴らの情報力はとんでもないものがある。わしはこうした渡世をしておるから、チャイナ系やシチリア系、南米系の悪も知っているが、ブロットはそのどれをも凌駕するといっていい」
ふうむ。
確かに、彼らは侮れないようだ。
彼らは魔央のことも知っていた。破壊神の力をもつということも。
そして、筋尾組長の発言に反応したということは、組長の動向を何かで監視していたということにもなる。
だけど、地下組織まで絡んでくるというのはやりすぎじゃないか?
この話は一体、どの方向を目指しているんだ?
『この話は現代ファンタジーよ、悠ちゃん。たまにラブコメ展開もある現代ファンタジーとSFの中間と考えてもらいたいわね』
「......! 知恵の使徒?」
何てメタな発言をするんだ。
『そして、"ジャーブルソン"こそは最初の敵対組織よ。ちなみにdjävulというのはスウェーデン語で"悪魔"のこと。ディアブロと似た響きだから何となく分かるでしょ?』
「はぁ......」
『つまり、彼らは自称・悪魔の子なのよ』
敵対組織......?
悪魔の子だって?
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