第4話 AI仲間?
『それじゃあね』
知恵の使徒は、来た時と同じく唐突に去っていってしまった。
一体、どうやって、人の端末を支配して話をしているのだろう。
全く想像もつかないが、正体不明の恐ろしい存在だということは理解できた。
「全くとんでもない奴だ」
「そうなんですか?」
僕の悪態に
「何だか、悠さんも楽しそうに見えましたけど?」
「楽しそう? そんな馬鹿な」
人類の悲観的な未来を語られて、楽しくなるほど、堕ちてはいないはずだ。
「話の内容というより、やりとり自体が。ですよね?」
魔央が周囲に同意を求めると。
「確かに、ワタクシの時より警戒感がなかったであります」
「悔しいけど、普通に話に入れていたわね」
「言われてみると、
「私が取材に来た時に、構えていたことと比較すると、無警戒でしたね」
「端末からの音声に対して、違和感なく話ができていましたね。高い親和性とIQレベルの一致を感じさせました」
一様に同意を示した。
あ、スマホゲームをしている馬鹿二名は除く。
「そんなことが……」
あるはずがないとは思った。
魔央との話があってからまだ十日も経っていない。それなのに、無茶苦茶な出会いが相次いでしまったから、脳が変なことに慣れてしまっているのではないだろうか。
「それに、最初、『悠ちゃん』って”ちゃん”付けで呼んでいましたよ」
「あれは僕を小馬鹿にするつもりで言ったんじゃないかな?」
あんなハチャメチャな考えをしている人と同列に扱われることに、僕はどうしても納得がいかない。
「そもそも、彼女、人間なのでしょうか?」
須田院が言った。
「知恵の使徒は世界最高のAI、MA-0をいきなり破壊したんですよ。そんなことが並の人間にできるはずがありません」
「いや、でも、七使徒は全員意味不明な能力を持っているわけだから、知恵の使徒の能力の一環ということじゃないのかな?」
「……私は思うんですけれど、ひょっとしたら知恵の使徒もAIなのではないでしょうか?」
「AI?」
「先ほど、四里さんの端末を簡単に乗っとったわけですが、そうしたものの把握は通常の人間には難しいと思うんです」
「AIかぁ……」
確かに人類を救う箱舟とか軽く言っていたけれど、そんなものが簡単に作れるとは思えない。となると、知恵の使徒は余程の天才学者か、あるいはそういうプログラミングをされているAIであると考えるのもおかしな考えではないのかもしれない。
「調べることはできるの?」
「MA-0が復活すればできるかもしれませんが……」
「復活するの?」
僕の言葉が無神経なものに聞こえたのか、須田院が怒りだす。
「当然です! MA-0は最高のAIです。必ず復活します! カワカミ・テックから内閣に圧力をかけて、予算をねん出させれば、一か月で復活します」
「そうなんだ。頑張ってね……」
僕達には調べる術もない。
仮に正体を調べるとすれば、MA-0が復活してからだろう。
ただ、以前のことを思い出す限り、また『計算機ごときが私に近づくなど言語道断』と破壊されて終わりになりそうだけど。
そうこうしているうちに通行止めが解除されたらしい。車が動き出す。
ようやく、ヂィズニーランドに行けそうだ。
最初は乗り気じゃなかったけど、バス内でかなり疲れた。
ここは一つ、何も考えずアトラクションを楽しもう。
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