第四章 何かが起こる遊園地

第1話 勢揃いのバス

 夕方、部屋に戻ると魔央、川神先輩、木房さん、山田さん、四里、須田院、武羅尾、武蔵が集結していた。


 いや、今朝の四里じゃないけど、この面々でヂィズニーランドを独占するなんてことはあってはならないと思う。言っていた本人がいるから説得力ゼロだけど。



 バスに乗って出発進行、箱崎で首都高に入り、辰巳で湾岸線を東に向かえば、舞浜まですぐ……。



 とはいかないのが、首都圏の道路だ。


「事故もあって5キロ渋滞だって」


「仕方ないですね」


 魔央はウトウトしているので関心なさそうである。


 しかし、君、メインヒロインのはずなのに寝ているか食べているか相槌を打っているだけじゃないかい?


 残りの面々も仕方ないと思っているようだけど、イライラはありそうだ。



 と……



「おい、コラァ、何こっち見とんじゃあ!」


 少し前の高級車のドライバーが、渋滞なのをいいことに車外に出て、前の車に文句をつけている。何が気に入らないのかは分からないけど、多分イラつきをぶつけているだけだろう。


「出てこいや、コラァ! ギャッ!」


 男はバッタリと倒れ、高級車からも前の車からも悲鳴が上がった。


「山田狂恋、気が合うであります」


 ワンショットで男の脳天を射抜いた山田さんを木房さんが褒める。


 そう言っている間に高級車がウゴウゴと黒い霧に飲み込まれていた。



「あのさ、簡単に凶器を持ち出すのはやめてよ」


 警察に見られたらどうするつもりなんだろうか。高速道路だからカメラだっていたるところにありそうなものなのに。


「私の銃は機械には映らないわ」


 ……ああ、そうですか。



 1時間後、すやすやと寝ている魔央を他所に……



『首都高湾岸線では、車が突然消える事態に驚いた付近の車両による玉突き事故が発生し、新木場から葛西まで通行止めになっております。尚、警視庁はこの事件に関して19時より記者会見を開くことを明らかにしており……』




「木房さんと山田さんはこのあと直帰ね」


「ヒィィィ、時方様、それは勘弁してほしいであります。ヂィズニーランドまで行って中に入れないなんて史上最大の負け組であります」


「お詫びとして一週間、舞浜で掃除するから見逃してほしいわ」


 全く、この二人は……


 とはいえ、あることが絡めば川神先輩も無茶苦茶になるんだろうけれど……


「時方君、私の顔に何かついている?」


「いえ、何も……」



 その間、ひたすらにタブレットを観察しているのが四里だ。


 恐らくは次の憤激砲の犠牲者を探しているのだろう。


 ただ、これだけ待ち時間が増えたなら、今、聞いてしまうのもアリかもしれない。


「四里さん、朝、言っていた反逆者ってことに関して教えてもらえない?」


 四里は顔をあげ、サングラスの位置を直した。


 日光が入らないバスの中でサングラスを直す訳は分からない。


「そうですね。無為に時間を過ごす今こそ、説明の時かもしれませんね」


 かなりこの状況をディスっている。


 その気は見せなかったけれど、実はかなりイライラしていたようだ。

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