第4話 訓練中の出会い
「参ったなぁ」
一時間後、僕は川神先輩と
車も道路も吹き飛んでしまった今、誰が使っているのか分からない道を辿るしかない。木々や草が足にからみついてきていて、本当に戻れるか不安になってきた。
「あの二人、どこに行ったんだろうか?」
こういう展開なら先ほど復活した
「どうでもいい時には騒いでいて、いてほしい時にはいないんだからなぁ」
「いないと思っていて、言いたい放題ね。時方君」
先輩のツッコミが飛んでくる。
確かに陰口をたたくのは良くないんだけど、実際そうだから。
少し歩くと、川のほとりまでたどりついた。
「向こうの方を少し確認してくるよ」
一応、ここにいる中で男は僕だけなので、確認は僕がした方が良さそうだ。
とはいっても、山奥でそこまで頼れる行動をとれるわけではない。
できることはというと、おそらく道があると思しき方向に進んでみるくらいだ。
ふと、何か気配を感じた。
「何だ?」
視線の先には依然として茂みしかない。
物音も何もないけれど、間違いなく何かがいたように思った。
だから、茂みをかき分けて、少し林の方に入る。
数歩歩いて何もなければ引き返す。あまり踏み入れると遭難の危険性があるからね。
数歩踏み込んだ。
何もない。
気のせいだったのだろうか。
僕は首を傾げて、戻ろうとした。
その時、やはり気配を感じて、ぐるっと振り向いた。
「……」
『……』
数メートル先の足下に何故か銃があった。銃をたどると、黒い手が見え、更にたどると黒い物体に行きつく。
数秒目視して、それがツキノワグマだと気づいた。
背を低くかがめて、匍匐前進をしていたようだ。
そうか、ツキノワグマか。
最近のツキノワグマは銃をもって、匍匐前進で移動するらしい。
勉強になった。
「そんなわけあるかぁ!!」
『ビクゥッ! ガウゥッ?』
僕のセルフツッコミに、ツキノワグマが思い切りビビッて立ち上がった。
慌てた表情で「動くな」とばかりに銃口を僕に向けてくる。
「うわぁっ!? タイム、タイム!」
銃口には逆らえない。いや、パニックのツキノワグマ自体にも逆らえないけど。
僕は両手をあげるしかない。
しかし、このツキノワグマは何なんだ?
誰かのコスプレか!?
「どうかしたの? 時方君?」
まずいことに川神先輩が僕の叫び声を聞いてかけつけてきた。更にガサゴソと音が続いて、気づいたら銃を持つツキノワグマが四体に増えている。
「先輩、ここは危ないです! あ、いや、浄化してください!」
「何を言っているの? 相手のことを確認せずに浄化などできるわけないでしょ?」
「えぇぇ!?」
いや、この前、問答無用で武羅夫や武蔵を浄化していたじゃないか!?
銃を持っているツキノワグマは良いのに、あの二人はダメなのか?
しかし、先輩は落ち着き払ったもので、「落ち着いて」とばかりに両掌を下に動かす。
『ガウゥ……クーン』
何故かツキノワグマは大人しく従い、銃の構えを解いた。
マジか!?
『ガウウ。ガウ、ガウ』
トランシーバーを取り出して、何やらガウガウ呻いている。
最近のツキノワグマは、トランシーバーで連絡を取り合うのか?
『エーポイントだね。分かったー』
「何っ!?」
トランシーバーの向こうから、女性の声がした。
ツキノワグマ部隊に囲まれたまま、数分が経過する。
銃を持ってチームで動いているクマなんて物騒極まりないけど、明らかに敵意はない。ただ、こちらが何かしたら、相手は間違いなく銃を撃ってくるに違いない。よくよく見ると、銃はツキノワグマの大きな手でも打てるようにカスタムがされている。
そんな状態で、僕達は待つしかない。先ほどツキノワグマと連絡をとっていた女性が来ることを。
程なく、奥からガサガサと草をかき分ける音がした。
「えっ、ゴリラ……」
そこにはトランシーバーを持つゴリラの姿があった。
あれ、ここ、日本だぞ。
ゴリラは日本にはいないだろ?
何で出て来るんだ。
「君、君、こっち」
ゴリラの後ろから声がした。
よく見ると、ゴリラの背中に小柄な女の子がいた。
ショートボブの茶髪で、身長は150センチもないように思える。
「あ、川神先輩じゃん。久しぶり」
女の子が先輩を見て挨拶をした。
「久しぶりね。
えっ、この二人、知り合い?
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