第2話 白の象徴
須田院は、僕の質問をそのまま入力しているようだ。
待つこと1分。
「時方悠君、貴方は破壊神
「そういう風には聞いています」
「黒冥魔央は世界中の破壊願望が一つになった存在です。その対になる者なのですから、貴方は世界を救う願望が一つになった存在、と言えるわけです」
「えぇっ!?」
これは驚いた。
世界を救いたいという願望が集まった存在が僕?
まるで、希望の象徴みたいじゃないか。何だか凄い響きだ。
「黒冥魔央さんが真っ黒な存在だとしたら、貴方は真っ白な存在なのです。真っ白な存在である貴方だから、真っ黒な存在である魔央さんの破壊を打ち消すことができるのです」
「僕が真っ白な存在? ということは、僕は無垢なものということ?」
そう言ったら、須田院は「まさか」というような呆れた顔を向けてきた。
「……残念ながら、そういう良い方向のものではありません。片方が全てを黒く変える存在だとすると、貴方は全てを白にしようとする存在なのです。赤や青として存在するものを徹底的に白く塗りつぶす存在、狂える白血球のように異物を徹底的に攻撃して撃滅する存在、それが時方悠君です」
「……それは、あまりうれしくない存在だね」
思った以上に攻撃的な存在らしい。
「あまりどころか、ものすごくうれしくない存在ですね。貴方に近づいた人間は、その徹底的な善性・白血病気質によって邪なる部分を攻撃されてしまいます。場合によっては本質近くまで攻撃され、白く塗りつぶされてしまい、死にます」
「……本質を攻撃……白く塗りつぶす」
「はい。貴方が生まれてからこれまでの間に、その極端な善性によって命を失った者は700人を下りません。しかも、これは1分間で
「そんなに!?」
いやいや、僕が認識している僕の知り合いはそんな人数にはならないよ。30人くらいだよ。
1500まで行くとなると、それこそ街で通り過ぎただけの人まで死なせてない!?
「そうです。その700人から1500人は程度を別として邪なる部分を持つ存在です。生きていればより大きな被害を産んだ可能性がありますから、世界にとっては正しい措置なのです。ただ、正当な理由があるとはいえ、それだけの人を死なせた人間と一緒にいたいか、と言われると?」
「いたくないだろうね」
僕は大きな溜息をついた。
以前、山田さんが言っていた。自分をいじめた三人が、僕の力で死んだということを。
そんなことはないと思っていたけれど、
そして、僕が好きだった
彼女もひょっとすると、僕の力で死んでしまったということなのだろうか?
僕が狂える白血球のような存在で、彼女の死因は急性白血病だ……
……。
……。
……打ちひしがれる話だ。
須田院の話は続く。
「黒冥魔央が世界を滅ぼした後、貴方にチャンスが与えられるのはひとえに貴方のとてつもない白さによるものです。つまり、貴方が白く輝けば輝くほど世界は安全になり、白さを失えば、世界滅亡に対抗しえないことになります」
「僕が白くなくなれば、世界を復活させられないわけか。で、白くなる条件というのは?」
「黒い人間を徹底的に排除すれば、白くなっていきます。それはもう、洗剤の広告もびっくりするくらいの驚きの白さに」
「……」
須田院はププと笑っている。ということはジョークのつもりなのだろうか。
僕は全然面白くない。IQの違いによる価値観の相違だろうか。
「……しかし、少しでも邪性をもつ人間を始末するなんて、まるで木房さんみたいだ」
世界人口を1000万人まで減らしたいという
須田院の言うことが本当ならば、木房さんのやろうとしていることを、僕はこれまで無意識にやっていたということになる。
「そうです。そもそも七使徒というのは個々の行き過ぎた正義の象徴です。全ての行き過ぎた善性の象徴たる時方悠君は、その上に立つ存在なのです」
「げげっ? そうなの!?」
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