第3話 愛で世界を救うことになりました・3
世界オカルト協会理事の
それは納得のいく話だけど、それなら、相手が固定される必要はないんじゃないだろうか?
「お婆さんやWOAは知らないかもしれないけど、中学時代に仲の良かった女の子が白血病で死んでしまって以降、僕は誰かと仲良くなるのが怖いんだ。
「ふぇふぇふぇ、知っておる。知っておるぞよ。
此花婆さんは本当に知っているようだ。鋭い眼光を僕に向けてくる。
だけど、僕にはそれがすごく無神経な態度に見えて、ちょっと腹立たしい気持ちにもなった。
あれがどれだけ僕にとってトラウマになっているのか、この婆さんは理解しているのだろうか?
僕も思わず睨み返したけれど、婆さんはニヤリと笑みを浮かべる。
「だが、それでも時方悠。そなたにやってもらわなければならぬ」
「どうして?」
「何故ならば……」
此花婆さんはそう言って、少し間を取った。
「何故ならば、お主は恋愛恐怖症だが、黒冥魔央は人間恐怖症だから、じゃ」
しばらくの沈黙。
僕は婆さんの言葉を飲み込んで、それを一旦理解して、ただ一回だけだと不安だから
「……人間恐怖症?」
婆さんはコクリと頷いた。
「考えてみたら分かるじゃろう? 黒冥魔央は世界中の負の想いを溜め込んでいるのだ。そんな人間が他人と簡単に打ち解けられると思うのかね?」
「……」
「それに、現代人共は欲望に正直というか、良からぬことも簡単に口にする。そんな奴らと一緒にさせられるかね?」
「つまり、婆さん達は魔央さんを隔離してきたわけ?」
黒冥魔央は破壊神の化身とも言える存在だと言う。
そんな存在が、変な人間と近づいて「世界を滅ぼすぜ、イェーイ!」とかなってしまったら一大事だ。
だから、非常に慎重な扱いをしていたのだろう。
早い話が、完全箱入り娘だ。
「……察しが良くて助かる。そもそも、我々はあらかじめそういう計画を立てていたのだ。誰を破壊神の化身とするかにしても厳正な選抜を繰り返していたのじゃ」
「魔央さんが特別な存在だということは分かったし、人間恐怖症というか人付き合いが極度に少ないことも理解したよ。ただ、それにしても僕以外でもいいんじゃないの?」
此花婆さんの答えは僕の質問の答えとしては、不十分だ。
人付き合いが苦手なら、尚更、善人で陽キャの存在が要求されるのではないだろうか。僕は、善悪は別にしても陽キャではない。陰キャ……か、どうかは分からないけど。
「そなたは話を急ぎ過ぎる。わしらは厳正な選抜の末に、この日本でもっとも辺境と言える場所、
「……名前だけは」
安倍晴明はさすがに有名だ。蘆屋道満にしてもゲームで聞いたことのある名前ではある。
「その二人をも凌駕すると言われていたが、凄すぎて歴史の闇に消えてしまった呪術師がおる。それが
「……その末裔が魔央さんである、と?」
「そうだ。破壊神となるべき願望を吸い込むようなことは並の娘には出来ぬ。平安時代から脈々と通じる最強の呪術一家・黒冥家の末裔だからこそできうることなのだ」
此花婆さんがそこまで説明して僕を指さした。
「そして、時方悠よ。そなたは、同じ最果村出身で、しかも蘆屋道満の血筋を引いているのじゃ。しかも恋愛恐怖症と来ておる。つまり、黒冥魔央と対になるべき存在なのじゃ!」
「えぇーっ?」
そんなこと、一度も聞いたことないんだけど?
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