第2話 愛で世界を救うことになりました・2
世界オカルト協会(WOA)なる組織の理事だと名乗った老婆・
「ふぇふぇふぇ、信じられないという顔をしておるな?
「うん。正直、ピンと来ないです」
「良かろう。まずはわしらの活動実績から説明しよう」
しまった。
僕は自らの発言を後悔する。
これはあれだ。
老人の長話に付き合わされるパターンだ。
予感は当たった。
此花婆さんは、世界オカルト協会のことを延々と話し出す。やれ、「ノストラダムスの大予言から地球を救ったのはわしらだ」だの「マヤの滅亡論を防いだのも我々だ」だの。
正直、「よく言うよ、このお婆さん」とも思うのだけど。
「……日本の首相が駆り出されるくらいの実績はあるわけじゃ」
……それだけは確かだ。あれが偽物の首相ということは、さすがにないだろうし。
「ノストラダムスやマヤレベルなら、人口が少なくて良かった」
「人口が少なくて良かった?」
「つまるところ、世界を滅ぼしたいというのは人間の願望じゃ。おまえも一度くらいはあるだろう。『こんな世界、なくなってしまった方がいいのに』とか『この世界は間違っている』みたいなことを考えたことが」
「……まぁ」
一度なんてことはない。数度はあるはずだ。
そもそも、こういうことを一度も考えたことがない人の方が少ないのではないだろうか。良くないことが起こると、そういうことを思う人は多いだろう。
「想いの力というのは、想像以上に強いものじゃ。一つや二つではたいしたことがなくても何十、何百と集まれば本当になる。
「世界中の人の何となくの想いでも、数が集まればシャレにならないレベルになるかもしれない、ということなの?」
「そうじゃ。ノストラダムスやマヤの時代には世界人口は二億程度だった。今はその四十倍だ。つまり、世界なんかなくなってしまえという思いも昔の数十倍集まるのが早い。こういう思いが満ち満ちて2025年に破裂して、地球は滅亡する。2000年にWOAはそう推測したのじゃ」
「それで僕が恋愛をするわけ?」
「話を急ぐな。WOAは解決策を探した。その結果、何人かの人間にこの思いを凝縮させて破壊神とすることにした」
「破壊神?」
僕は再び、先程の写真を眺めた。
「この子が破壊神なの?」
「うむ。黒冥魔央は84、60、85のサイズに、ン十京以上の『こんな世界なくなったらいいのに』という願いを蓄えている」
「今の説明にスリーサイズぽい数字はいるの?」
僕のツッコミを無視して、此花婆さんの話は続く。
「一度、彼女がその言葉を口にしようものなら、ン千億の願いが放出され、世界は滅ぶ」
「ほえ~」
そんなことが現実にあるんだろうか。
現実味のない話だけど、ただ、理屈は何となく分かる。
「この子が破壊神だということは分かったけど、僕が救うというのはどういうことなの?」
「破壊神は世界破壊の願望を詰め込んだ存在だ。しかし、当人は個人。仮にこの個人が心から幸せだと考えていたら、どうなる?」
「あぁ、なるほど」
ようやく見えてきた。
つまり、この
で、「幸せ」という強い思いのために恋愛というわけね。
そこは納得できた。
でも、まだ疑問はある。
「でも、それなら彼女の相手が僕である必要はないんじゃないの?」
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