僕達の世界はすぐに滅びる(そして大抵はすぐ復活する)
川野遥
第一章 恋人は破壊神?
第1話 愛で世界を救うことになりました・1
質問:もし、誰かに貴方の愛しかこの世界を救うことができないと言われたら、どうしますか?
「……この女の子が」
僕は差し出された写真を手に取った。
明るい茶色に染めた髪が肩のあたりにかかり、大きめの瞳が特徴的な女の子が写っている。綺麗というよりは可愛い系で、まあまあ可愛い。いや、かなり可愛い。
「この女の子が、僕の許婚だと言うんですか?」
僕……
「そうだ。君は、この
僕はどういう顔をすればいいのか分からない。
頭を抱えたらいいのか、あるいはハァーと大きく溜息をついたらいいのか。
今は2023年、21世紀の科学社会である。そんな社会で先月大学に入ったばかりの人間が、「世界を救うのは君しかいない。この女の子とラブラブになって世界を救うのだ」などと意味不明なことを言われるなんてこと、ありえるのだろうか。
しかも、それを言うスーツの男は驚くなかれ、何と日本国首相の
突然呼び出された学長室には、僕と首相しかいない。
首相がドヤ顔を決めている以上、僕が何か言わないと話が進まない。
しかし、何を言えばいいんだろう。少し考える。
「……これってドッキリですか?」
「否! 断じて否だ!」
首相は悲しそうな顔をして叫び声をあげた。
「君が疑うのは分かる。『総理大臣がこんな訳の分からないことを言って、日本は大丈夫なのか?』と不安になっているのも理解している。だが、これはしかるべき機関の調査による動かしがたい事実なのだ」
「しかるべき機関?」
「ここから先は、その人に話をさせよう。私は国会審議もあるので、そろそろ失礼する」
首相は一方的に話を切り上げ、立ち上がって出て行った。
国会審議もあるので、というより国会審議の方が大切なんじゃないだろうか。
日本の先行きに不安を感じていると、首相が出て行った扉が開いた。
「うわ……」
まるでファンタジー世界にあるような魔術師のローブを着た老婆が入ってきた。身長は150センチもないだろう。僕より頭一つ小さい。
年齢は正直分からない。というのも、顔がしわくちゃでもの80とか90歳に見える一方、足取りは60歳くらいなんじゃないだろうかという軽い。
「ここから先は、わしが話をしよう」
老婆の声を喩えてしわがれた声、ということがある。まさにそんな声だった。
「……それはいいんだけど、お婆さんは何者?」
僕の問いかけに、お婆さんはニヤリと笑う。
「わしは、WOA(World Occultic Association=世界オカルト協会)理事の
「WOA?」
聞くからに怪しい組織だ。
「聞いたことのない組織だろうが、我々こそが世界を救ってきた組織なのじゃ」
「世界を救う、ねぇ」
僕はまたも返事に困った。
正直、世界を救うなんて話をしていいのは、小学校中学年くらいまでだと思う。
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