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「ボリジン?」
スプーンを持つ手が止まった。
「なんだっけ?それ」
僕の左にはプナキア、右にはシャイニーさん、そして正面にはネピルが、長方形のテーブルにかけていた。プナキアとシャイニーさんはテーブルの狭い面にかけている。
ネピルが呆れた顔をする。
「前に説明したじゃないか。昔はこの世界に人間って種族とそれに作られたロボットがいたけど、今は人間が滅んでロボットだけになったから、彼らは自身をボリジンと名付けたって」
そういえば初めの頃そんな話を聞いた気もする。しかし、もう十か月も経っているから、記憶はおぼろげだ。
プナキアはいつものごとく美味しそうにシチューをすすっている。僕は質問した。
「確かあの時は、人間っていう種族が、ロボットに酷い扱いをしていたって言ってたよね?」
「まあでも少し前には、人間がロボットと共に生きていこうとした時代もあったんだ」
だからともに食事をしようと、ロボットも人間のような機能を備えているものが多くなった。大体の人間型は人間と同じような機能を一つや二つ持ち合わせている、らしい。ロボットや人間という概念はいまいちピンとは来ないけれど、歴史を学べているのだと思うと楽しい。
シャイニーさんがクスクス笑う。
「ステラは、知りたがり屋さんなのね」
僕は胸を張った。
「最近は、自分の過去について知ろうと頑張ってるんだ」
僕は自慢話をするみたいにシャイニーさんに耳打ちした。
「不思議なんだけどね、実を言うと、ここに来るまでの記憶が何もないんだ」
そう言った時、急にネピルが僕の話を遮った。
「この話はやめようか」
「あーあ」
ガラクタに座り込んだ。僕はどこからきたか、何者か。なぜか、ここにいれば自然と答えがわかるような気もしていた。しかし、未だに何もわからない。 自分が気持ち悪くて仕方がない。
足元に何かがふれて、苛立ってきてそれを勢いよく蹴った。
「ん?」
目の前の景色が少し変わって目を見張った。蹴り飛ばしたものが、積み上げられたガラクタをほんの少しずらしたのだ。
すると、何本も引かれた線が見えた。それは不規則な間合いで引かれた短い線で、下の方であればあるほど線同士の隙間が狭い。
「これ、何だろう?」
まず障害物をどかして、線に近づいた。よくよく見ると横線の端に数字がある。
下から4、5、6、7、8、9、 10。
ドキッとした。10の高さの前に立ってみる。少し僕の方が高いがほんの数cmの差だ。僕は、なぜかその場所から動けなくなった。 わけもなく、懐かしいと感じた。
ふと襲われた。何が?心が。
強すぎる感情に急に捕らわれて身動きができない。
「あれ、なんか」
体が震えて、その場にしゃがみこむしかなかった。
「なんか・・・おかしいな」
心臓が痛いほど呻いて首を絞め上げた。 何かが僕の中で、声を上げようとしているみたいだった。
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