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その時。
「何なのよ」
暗がりから声がした。
「どうしてそうやって、勝手に私の幸せを決めるのよ 」
シャイニーさんだった。彼女の怒りの目を見て、僕を見た。驚いている。そりゃそうだよな。
彼女は近づいてくる。 細長い足の動きだけが影から見える。 僕は隙をみてプナキアの元へ駆け寄った。脇役ははけておこう。
彼女の周りを白い粒子がキラキラしながら飛んでいる。 初めて会った日、ネピルを照らしていた光を思い出す。
僕は彼女を目で追いながら、プナキアにそっと囁く。
「綺麗だね」
シャイニーさんがネピルの元へとたどり着いた。ネピルは苦しげにうめく。
「その光を消してくれないか 」
「いつかの晩,私のショーを地上で見てくれていたでしょう?わかるのよ、あなたの視線は 」
「・・・」
プナキアが横でそっと教えてくれた。
「彼女は空を舞う踊り子なのです」
「踊り子?」
「ボリジンにはエンターテイメント用の者たちがいて、それらは特別な力を持ちあわせています。 彼女の場合は、見る者を魅了する美しく白い粒子・・・ですね」
ボリジンがなんのことなのかよくわからなかったけど、質問は後にしよう。
シャイニーさんは擦り切れて端がボロボロのブロマイドを手に取った。
「・・・これを渡すと、あなたは真っ赤になっていたわね」
シャイニーさんはクスクス笑う。
「 君はあんなにも楽しそうに空を舞う…巻き込みたくないんだよ」
ネピルは、言った。
(巻き込みたくない?)
その時一瞬だけ感じた違和感は、すぐにさらりと流れて消えていった。
シャイニーさんは微笑んでネピルの元にしゃがみこみ、両手でそっと頬を包む。女神の様な美しさだ。
「どんな秘密があっても、あなたを好きな事実は変わらない 」
ネピルの体から糸がほぐれたように力が抜けていくのが見えた。
「バカにしないで。 自分のことがあなたより大事なら、あんな手紙書かないわ。いい加減、気づいてよ」
彼女の声が染み込んでいく空間が心地いい。ネピルの声が震えた。
「本当に僕でいいの? 」
シャイニーさんは即答する。
「あなたが良いの 」
僕とプナキアは、静かにはしゃぎながら、その場を離れた。
邪魔者はただ退散するのみだ。
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