第7話 隷属①

俺はこの人間の街、詳しくはアルデシア帝国の最西端に位置するディ・アータ城壁都市


帝国の第11皇位継承権を持つ皇女の統べる街で人に危害を加える魔獣、魔物、凶悪犯などの対応にあたる“ギルド”が国内最大であり、有名な魔術師や剣士を多く輩出しているらしい


こいつらも上手く使えば扇動に利用できそうだ


そう甘くはないだろうだから時間をかけてやらねばならない


そのためにはまず、あの奴隷たちが欲しい


買うのは時間がかかる


早急にアレを手に入れるには


あの奴隷商人の殺害か





「いらっしゃいませ〜どんな奴隷をお求めですか?」


奴隷区と呼ばれる場所にある一つの店は世界中から捕らえられてきた奴らが展示されている


その入り口には受付嬢がおり、満面の笑みで俺を迎えた


「はい、できれば読み書きができる子がいいです」


ここの会話は何でもいい、俺が見にきたのは奴隷じゃなくてこの建物の構造だ


一階に檻が二段に積み重ねられており、人間が左右を見ながら好きなやつを選ぶという感じなのだろう


さっきの入口、嬢がいたカウンターのような場所には暖簾(のれん)で隠れた奥の場所があった


おそらく店の裏だろう


そこにあの大柄な店主がいるのか、それとも別の場所にいるのか


いずれにせよ店の構造は理解した


あとは適当に理由をつけて、あ…


「お、珍しく若いのがいるじゃねえか」


本命がわざわざ現れてくれた


それに今の足音の感じ…階段を降りてきたな


2階にいたのか


出来るだけ早くこいつを殺してここにいる嬢と全ての奴隷が欲しい


だが焦りを抑えて、一度店を後にする


外で待っていたミャクナに他の店の事情を聞くとあまり活気はなく


俺が入った店だけが繁盛しているようだ


「なぜあそこだけ繁盛してるんだ?ミャクナは何かわかるか?」


「あの店の紋章です」


ビッと人差し指を刺した先には、豪勢な紋章が看板に掘られている


あの紋章、街の中心部にある宮殿で見たやつと同じだ


「なるほど皇族が後ろにいるのか」


納得した俺はすぐに次の質問をミャクナに投げた


「ミャクナ」


「はい」


「そういえばお前は魔法は使えるのか?」


俺の質問にミャクナは無表情のまま答える


「風の魔法なら少々」


ミャクナには俺が騒ぎを起こしたら別の方に注目が集まりように指示した


だがワンチャン俺に従わず逃げる可能性があるか…


そう考え始めるとやはり”絶対に裏切らない”味方がいる


少し下を向いて腕を組みながら考える


そういえばあの奴隷たちはなぜ反抗しないんだ?


男には勝てないかもしれないが隙を見て逃げることぐらいできたかもしれないのに


もう一度明日ゆっくり奴隷たちを見てもいいな


まだ俺には知らないことが多すぎる


俺はその日ミャクナと共に宿に泊まった


もちろん代金は彼女に払わせた











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