第6話 時は金なり⑥

俺がこの村を指揮し始めて一週間は経っただろうか


皆しっかり働いてくれている


今の現状でも十分裕福な状態だが


俺よりも強い生物が現れた場合、それは俺の敗北になる


それだけは絶対にダメだとわかる


今必要なのはあの耳付きの女を使って外貨を稼ぐことだ


そこで俺は今いる村の中で最も知識ある者を自室に呼んだ


「いかがなさいましたか?」


そう敬語で質問しながら俺に頭を下げ床に座るこの子はミャクナというらしい


黒髪が美しく青眼をしており。すらっとしている身体は男好みだろう。いい値段で売れる可能性がある


「お前言ってたよな?この近くには人間の村があると」


以前そんな会話がどっからか聞こえ、ずっと気になっていたのだ


「はい、ここから南に進みますと人間の街があります」


「うん、その規模は?」


「詳しいことまではわかりませんが人間国家の軍隊が常駐している規模かと」


軍隊?まためんどくさそうなのがいるな


やっぱりそうしたところはどこの世界でも抜け目ないな人間は


「なるほど、ほかにも教えて欲しいがこの腕の模様分かる?」


スッと見せた右手の模様にミャクナはすぐさま返答した


「はい、魔術召紋です」


「これは何?すべての生物にあるの?」


「いえ、生まれついての才だと聞いております。魔術召紋が出る生物はヒトガタのものに限られると聞いたことがあります」


「ふむ」


話を聞くと、俺の右手の紋章は貴重で希少らしく。


数ある人間の英雄が持つことが多いとのこと


ミャクナには仕事に戻らせ、村にある地図を見る


ざっとした適当な地図だがこの付近には町は一つしかなくそこには多くの人間がおり、軍隊や魔法使いがいるとかいないとか


そこでこの村で飛び切りの美人を選別して街で商売を始めようと思った


人間がいる以上そこは欲の世界だ


必ず物好きや、興味を抱く者が現れるはず


まずは手始めにミャクナと街に向かった


この紫色の森を抜けれるのはかなり嬉しい


ずっと変わらない景色には飽きていた


「ようやく人間に会える」そう思うと歩くスピードも自然と上がった


紫色と緑色の草木が混ざり合っている場所に出た


「そういえばこの紫色の葉って緑色のとは何が違うんだ?」


俺の質問にミャクナは丁寧に答える


「人間に有害な毒素が出ております。普通の方なら半日ほどで死に至ります」


なるほど


ん?じゃあ俺はなぜ死んでいないんだ


あまりミャクナに質問しすぎると、俺がこの世界のことを知らないのがバレるか


もうバレているかもしれないが、最悪ミャクナを殺せばいいか


でもやっぱり俺一人でこいつら全員を監視するのは無理がある


間違いなくあの村でも俺に隠れて何かしているだろうし


それをどうすれば無くせるか


そう空を向いて歩いていると


不意に何かにぶつかった


「おい!何やってんださっさと立て!!」


目の前にいたのは首を鎖でつながれた人間だ


一列に並んで歩かされており、それを見た多くの人は関わらないようにしようという素振りを見せた


よくその人間たちを見ると顔が暗い


元気のない連中ばかりだ


気になった俺は街を少し歩いてみた


歩くだけでわかるこの雰囲気、俺の元いた国にそっくりだ


あの忌々しき世界と同じだ


こいつらは今の現状に不満があるんだ


これはチャンスだ。天が俺に与えたチャンスなんだ


人の世に生まれてこれほどまでに興奮したことはない


この国を…俺のものにしてやる…
















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