第46話 チンピラがきたよ


 ユグドラシル王国のみんながSNSに夢中だから、俺もSNSをやってみることにした。

 前世でニートをやってたころの俺は、もちろん引きこもりだったから、キラキラしたSNSとは無縁の生活を送っていた。

 もちろんオタクだったからTwitterはちょくちょくやってたけどな。

 だけど俺はオタクの輪にもなじめないタイプのコミュ障だったから、SNSはそれほどやってなかった。

 もちろんインスタやTiktokなんかもってのほかだ。

 俺にはそんな陽キャ御用達のSNSは無縁だった。


 だがしかし。

 今の俺は、そこそこ見た目がいい。

 見ようによっては美少女に見えるくらい、中性的な美少年だ。

 俺は、自分で自分の写真をとるのがはじめて楽しいと思えた。

 そっか、陽キャたちは自分の写真とるのがこんなに楽しいんだな。

 そりゃあ、みんな躍起になってSNSやるよな……。


 自分の盛れた写真にいいねがたくさんつくと、ものすごく承認欲求が満たされた。

 これまでSNSでバズったことなんかなかったから、初めての経験だ。

 俺はかつてないほどに満たされた。

 SNSでいいねをもらうことが、こんなにも気持ちがいいなんてな。

 俺はエルフたちと一緒に写真をとったりして、SNSでそこそこバズった。


 俺もゲームの動画とかをYouTubeにあげたりもした。

 みんなに認めてもらうのがこんなに楽しいなんて、前世の俺は知らなかった。

 すると、信仰ポイントがものすごい勢いで溜まっているのに気付いた。

 そうか、SNSでのバズも、ある意味信仰を集めるようなものか。

 それにしても、地球の人たちからの信仰も、信仰ポイントになるなんてな……。

 SNSのバズ効果と、ユグドラシル教のおかげで、俺の信仰ポイントはさらに加速度的に増え続けた。



 ◆



 その日は、俺もカジノでギャンブルを楽しんでいた。

 俺はパチンコ台の前に座って、だらだらと酒を飲んでいた。

 ニートしてたときにも一時期パチンコにはまったことがあったから、こういうのは嫌いじゃない。

 まあ、すぐに小遣いがなくなってやらなくなったんだけど。


 俺がしばらくカジノに入り浸っていると、突然、カジノの中で騒ぎが起こった。


「あん……!? 俺がイカサマだと……!? ふざけんじゃねえ! イカサマなんかしてねえ!」


 なんだ……?

 振り向くと、そこにはイカサマを疑われて、今にも暴れ狂いそうな男がいた。

 男はいかにもなチンピラという服装で、とうてい金をたくさん持っているようには思えなかった。

 明らかに、カジノに入るには場違いなやつだ。

 まあ、カジノとはいえ、パチンコなどは安く遊べる。

 だが、それにしても彼らの服装は、町人というより盗賊に近かった。


 しかも彼らはよくみると、カードゲームで、かなりの高額な金をかけているみたいだった。

 いったい彼らのどこにそんな金があるのだろうか。

 一番騒いでいる男のうしろには、さらに身なりの悪いチンピラが複数人いた。


 さすがにこれは大きなトラブルになりそうだな……。

 俺はカジノのディーラーに話しかけた。


「どうしたんだ……?」

「セカイさま……それが……こちらのお客さまがイカサマを……」

「うるせえ! 俺たちは客だぞ……!?」


 俺はディーラーから詳しい話をきくことにした。

 どうやら彼らがイカサマをしたというのは間違いないらしい。

 奴らのイカサマの手口は、それはもう素人同然で、ずさんなものだった。

 まったく、面倒な輩だ。


「おい、オークたち。彼らを街から追い出してくれ」

「わかりました、セカイ様」


 俺はすぐにオークに命令して、彼らを追い出す。

 この街の治安はオークたちによって守られていた。

 このような面倒なやからは、たまに現れる。

 だが街の秩序を守るため、ルールをまもれないやつはお帰り願っている。


「おいこら! はなせよ! 俺たちは客だぞ!」

「ルールを守れない方には、お帰り願っているんだ」

「くそ……こうなったら……!」


 すると、チンピラたちは剣を抜き始めた。

 どうやら盗賊のような見なりだと思ったが、本当に盗賊同然のやつらだとはな……。

 カジノの中でやりあおうっていうのか。


「オーク! やつらをやっつけろ!」

「はいセカイさま……!」


 チンピラたちは剣を抜いて、オークに抵抗しようとする。

 しかし、さすがはオークだ。

 人間なんかには負けるはずもない。

 チンピラ連中はオークにあっという間に倒されてしまった。

 みんな気絶して、残っているのはリーダーの男だけだ。


「っく……いいのか? 客にこんなことして……!」

「ここはユグドラシル王国だ。勝手はゆるさない!」

「俺たちのケツモチはな、デズモンド帝国の男爵なんだ。俺たちにこんなことして、ただで済むと思うなよ? きっと後悔することになるからなぁ! ふん、おとなしくカジノで儲けさせてくれれば済んだのによぉ! 馬鹿な奴らだぜ! はっはっは!」

「…………? なにを言ってるんだ……?」

 

 チンピラめ、とうとうおかしくなったのか?

 彼はそう捨て台詞を残すと、一人だけ逃げるようにして去っていった。

 まあ、自分で出ていってくれるのなら、それでいい。


 残った気絶しているチンピラたちは、オークになんとかしてもらおう。


「おいオーク、こいつらを森の外に捨ててきてくれ」

「わかりました。セカイ様」


 これにて一件落着だ。

 カジノが出来て観光客も多いと、こういうおかしな連中がやってくるのも、まあ予想のうちではあったが……。

 それにしてもしょうもないやつらだったな。

 どこかでこのカジノで儲けられるという話をきいてやってきたのだろうが、さすがに考えが甘すぎだ。

 それにしてもデズモンド帝国がどうとか言ってたな……。

 きいたことのない国の名前だ。

 まあ、別に気にする必要はないだろう。

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