第35話 娯楽だよ


 観光客ばかりが楽しんでいたが、俺たちにも娯楽は必要だ。

 これまで、俺たちの街ではこれといった娯楽がなかった。


 せいぜい、モッコロの商会から取引で手に入れた本を読むくらいなもんだ。

 

 だが、ここらでそれも終わりだ。

 そろそろ俺たちにも娯楽が必要だ。


 信仰ポイントも、かなり溜まって、10万を突破した。

 これでいろんなことに使いたい放題だ。

 観光客が増えたことで、信仰ポイントがかなり溜まったらしい。

 どうやらこの街の、つまり世界樹の影響力が増したことで、観光客からもポイントを得られたようだ。


 あらためて、信仰ポイントを利用できるメニュー画面を見てみよう。



===============

メニュー


 建築

 購入

 売却

 創造

 設置

===============



 この中に、創造という項目がある。

 これは、自由にものを創造し、生み出すことができる項目だ。

 以前にも、植物の成長を促進させる成長促進剤をつくったな。

 ちなみに、一度創造で創ったものは、購入からまた買うことができる。


 だが、この創造というのも、なんでも作れるというわけではないようだ。

 例えば、魔法のような、抽象的なものはできない。

 それから、なんでも斬れる剣のような、無理難題もできない。

 理論上はできるようだが、それには必要な信仰ポイントが多すぎる。

 創造で創れるものの、複雑さや難易度によって、信仰ポイントの必要量が変わるみたいだ。

 だから、なんでも斬れる剣を作ろうとおもったら、天文学的な数字の信仰ポイントが必要になるわけだ。


 さて、今回はだ。

 この創造の項目を作って、いろいろ娯楽を生み出そうと思うのだ。

 建築メニューには、あくまで建物などしかない。

 だから、この創造で、つくれるものを増やすんだ。

 俺は幸いにも、元日本人で前世の記憶がある。

 それを利用して想像力を働かせれば、無限に娯楽が生み出せるだろう。


 まずは手始めに、簡単なボードゲームを作ることにする。


 俺は創造メニューから、オセロを創造する。

 頭の中でオセロを思い浮かべて、あとはそれを出力するだけだ。

 俺の前に、オセロの一式が出来上がる。

 オセロを創造するのにかかった信仰ポイントはわずか500。

 あとはこれを購入メニューから、なんどでも、500ポイントで購入可能だ。


 俺はオセロをエルフたちに見せる。


「セカイ様、なんですか? これは」

「いいからいいから、まずは遊んでみよう」


 俺が説明すると、エルフたちはすぐに食いついた。

 みんな、娯楽に飢えていたのだ。

 エルフたちはさすが、頭もよく、すぐにルールを理解した。


「さっそくやってみよう!」

「が、がんばります……!」


 俺はエルとオセロをやってみる。

 俺たちがオセロをやり始めると、なんだなんだと、街のみんなも集まってきた。

 オークやドワーフたちが後ろから興味深そうに眺める。


「セカイ様はなにをやっていらっしゃるんだ……?」

「さあ。俺にもわからない」


 しばらくオセロに熱中して、俺とエルは3回ほど勝負した。

 なんと、エルフの知能はすさまじく、3回目には完全にセオリーを理解し、俺は負けてしまった。


「くぅ……初心者に負けた……」

「すごいです! セカイ様! これ、面白いです!」


 エルはよろこんでくれたみたいだ。

 これは、みんなにも受け入れてもらえそうだな。


「なんだなんだ、俺もやってみたいぞ!」

「お、俺も……! セカイ様! 俺、さっき見ていてルール理解しました。次俺にやらせてください!」


 ゴブリンのヨークが俺に勝負を挑んできた。

 ヨークもさすが頭がいい。

 すぐにルールを理解していた。


「よし、みんな。板はたくさんある、みんなで自由に遊んでくれ!」


 俺は興味のあるみんなに、オセロ一式を配った。

 すると、すぐにオセロ大会になって、みんな楽しんでいた。

 街では、オセロが大ブームになった。


 数週間して、みんながオセロに少し飽きてきたころ、俺は頃合いをみはからって、今度はチェスを出してみた。

 すると、


「な、なんですかこれは……! すごい……!」

「これは面白い! オセロよりさらに奥深い……!」

「セカイ様はすごい……! なんでも知っているなぁ」

「さすがはセカイ様が創造された娯楽だ……!」


 チェスは、オセロ以上にみんなに好評だった。

 ちょうど、オセロに飽き始めていたタイミングもよかったのだろう。

 それから、俺はことあるごとに、次は将棋、囲碁、麻雀などの思いつく限りのボードゲームを提供した。

 カルカソンヌなんかも面白いな。

 どれも非常に好評で、街は娯楽にあふれるようになった。


 また、街にたまにやってきたモッコロにもボードゲームを見せたところ。


「これは……! 他の街でも、王都でも流行るに違いません……! これらを製造するライセンスを売ってくれませんか……!」


 というので、許可したところ……

 モッコロの店で各種ボードゲームを売り出したら、他の街でも大流行しはじめたようだ。

 あくまで俺のアイデアだということを、モッコロは強調したいらしく、俺の世界樹のマークを、すべてのボードゲームに入れていた。

 セカイ印のボードゲームということで、ブランド化に成功したようだ。

 俺は、ライセンス料として、売り上げの何割かをもらっている。


 そのうち、王都でも大流行りして、ボードゲーム=セカイと、俺の名が代名詞になるくらいになったようだった。

 俺はまだこの街から一歩も出てないというのに、俺の名前だけが勝手に有名になっていった。

 王様まで目を付けたらしく、このすばらしいゲームの制作者は誰だという話になったらしい。

 いろいろ説明するのも面倒だし、今のところ王様とかと関わる気もないから、モッコロにはそれとなく濁してもらっている。


 それから、ボードゲームなどのインドアな娯楽だけじゃなく、公園も作った。

 建築メニューには建築物しかなく、公園にありそうなブランコなどはなかった。

 なので、それも創造メニューから俺がつくることにした。

 俺は創造メニューで、ブランコ、シーソーなどの、公園に必要なものを作り、購入した。

 それらを組み合わせて、街に公園を作ったところ、ゴブリンの子供たちにすごく好評だった。

 大人たちも遊びたがるので、さすがにブランコはなぁ……と思ったので、俺はアスレチックを建築することにした。


 さすがに創造メニューからアスレチック全体を作り上げても、組み立てや設置が大変だ。

 なので、俺が指示して、ゴブリンたちに組み上げてもらった。

 アスレチックの細かいパーツは、俺が創造メニューから作り、それを彼らに組み立ててもらったのだ。

 アスレチックは、大人子供問わず大人気になった。

 さすがはゴブリンやワーウルフ、人間とは比べ物にならない身体能力で、普通のアスレチックは一瞬でクリアしてしまった。


 そのうち、自主的にアスレチックを高難易度化し、改造する奴らまで現れて、どんどんアスレチックが複雑になっていった。

 俺は、運動神経あまりよくないので、正直もうついていけない。

 アラクネーなんかは、足が何本もあるので、簡単にアスレチックをクリアしていた。

 そんな感じで、俺たちの街にも、娯楽が充実していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る