第36話 閑話休題だよ
モッコロと最初に出会ったとき、彼はまだ10代だった。
だが、モッコロも今年で56になるのだという。
モッコロが街にやってくるとき、彼は息子を連れてやってきた。
「どうも、モッコロの息子のドウェインです」
ドウェインとは何度か顔を合わせたことはあるが、ちゃんと話したことはあまりなかった。
「どうしたんだ、あらたまって」
「いやぁ、私もそろそろ引退しようと思いましてね。今後は、この息子のドウェインにいろいろ任せようと思います。それで、一度セカイ様にもご挨拶にと」
「なるほどな、お前ももう56だもんな」
日本人の感覚だと、56でもまだまだ働けるといった感じだが、こっちの異世界は、かなり寿命が短い。
栄養状態なんかも悪く、昔の日本人みたいに、人間の寿命はあまり長くない。
だから、56まで働いたモッコロは、かなり頑張ったほうだった。
おそらく、俺という世界樹をまもろうという意思が彼をここまで頑張らせたのだろう。
なんとか俺に恩を返したがっていたからな。
だが、これまでモッコロの商会にはいろいろと世話になったし、もう十分返してもらったと思う。
ゴブリンたちも、最初リンダに出会ったころは、リンダは40代くらいだった。
だが、そのリンダも今や80にもなる。
ゴブリンの寿命は人間よりは長いが、それでももう、あれからかなり時間がたったわけだ。
そう考えると、モッコロの引退もなんら不思議ではない。
ドウェインは、30代くらいの好青年だった。
モッコロの息子だし、しっかりしているのだろう。
今後は、商会との取引は、ドウェインがやってくるそうだ。
「よろしく頼む、ドウェイン」
「こちらこそです、セカイ様。父が助けてもらった恩は、私が返していきますので」
「おいおい、それはもう十分返してもらったって」
「いえいえ、まだまだ、セカイ様にはお世話になっているので」
それはお互い様なんだけどな。
◇
ちなみに、モッコロたちの国は、世界樹の街から南にあるグリエンダという帝国だ。
グリエンダは非常に栄えた帝国で、いろいろな種族が暮らしている。
いちおう、ここの街の土地はモッコロが所有しているので、俺たちの街もグリエンダ帝国の一部ということになるのだろうか……?わからない。
モッコロの商会を通じて、グリエンダとはかなり取引をしているので、お互いに行き来がある。
多くの観光客も、グリエンダからのものだった。
モッコロの商会は、グリエンダの王族ともつながっていて、国一番の商会にまで成長したらしい。
ちなみにモッコロは、グリエンダの中でも大き目の都市、フランフルトの町長でもあるらしい。
フランクフルトは多くの商人が行きかう、栄えた街だそうだ。
いつか行ってみたいな。
モッコロは、王様にも、俺の話をいろいろとしているらしい。
王様は、人柄もよく、俺たちに好意的だそうだ。
グリエンダでは亜人もいくらか暮らしているそうだから、モンスターなどにあまり差別意識がないようだ。
ふつう、知能が高いとはいえ、モンスターの集落など、警戒されてもおかしくないだろうに。
グリエンダの王、バマク国王は、俺の作ったボードゲームも気にいってくれているようだった。
今ではグリエンダでは、ボードゲームが、セカイゲームという名で広く知れ渡っている。
バマク国王は、俺に強い興味を持っており、いつか会いたいと言っているようだ。
そのうち、俺、国王に呼び出されたりするのかな……さすがにそれは面倒だ。
まあ、向こうから来られたらさすがにどうしようもないけど……。
ちなみに、俺たちの街は、グリエンダでは、ユグドラシルの里と呼ばれるようになってきたらしい。
観光客たちも、みんなユグドラシルの里と呼んでいた。
俺たちもそれを採用して、最近では街のことをユグドラシルの里と呼ぶようにしている。
さて、その観光客たちだが――。
せっかく増えた観光客だ、もっと稼げる方法はないかと考えた。
まあ別に、金に困っているわけじゃない。
金ならモッコロの商会もとい今後はドウェインの商会だが――から、たくさんもらっている――ややこしいので、今後はラック商会と呼ぶことにしよう(モッコロの姓はラック)。
だが観光客が増えると、どうやら信仰ポイントも溜まることがわかってきた。
観光客がこの街に満足すればするほど、信仰ポイントは大きく増える。
さらなる観光客を呼び込むために、俺が考えたのは――。
――カジノだ。
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