第30話 聖剣だよ ★改稿
「こ、これは……! これは伝説の素材、ユグドラシル鋼じゃないか……!」
「伝説の素材……!?」
ドワーフのリダフは、俺の枝を見てそう言った。
「鋼って、これ、俺の枝だけど…………」
「いや、間違いない。これはユグドラシル鋼だ。わしは昔、一度だけみたことがある……。すごいぞ……! これさえあれば、なんでも作れる……!」
リダフは俺からユグドラシル鋼を受け取ると、さっそく武器を作りはじめた。
しばらくトンカチをカンカンして、どうやら剣ができたようだ。
リダフは出来上がった剣を俺に持ってくる。
「さあ、セカイ様、この剣に魔力を流し込んでくだされ」
「魔力を? 俺が?」
「はい、この剣はまだ、所有者のいない、空っぽの状態。セカイ様が魔力を流し込むことで、この世界で唯一の聖剣になるでしょう」
「そうか、よし」
俺は、剣を受け取り、そこに魔力を流し込むイメージをした。
すると、剣がものすごい光を放った!
俺の身体からできた武器だからか、俺の魔力とも相性がいいのかな。
しばらくして光がおさまると、それと同時に、剣の姿が変化した。
最初、リダフから受け取ったときは、なんの変哲もない剣だった。
それが、まさに聖剣と呼ぶにふさわしい、神々しい見た目に変化したのだ。
「こ、これは……?」
「聖剣が、セカイ様の魔力に応じて、自分のふさわしい形に変化したのでしょうな」
俺は剣をじろじろと眺める。
どこから見ても、まごうことなき聖剣だ。
俺の手によくなじむ。
まるではじめから、俺の身体の一部だったかのようだ――いや、俺の木の枝からできているから、まさしくことはもともと俺の身体の一部だったものか。
せっかく手に入れた聖剣だから、俺もはやく使ってみたい。
さっそく素振りしてみようか。
「まあいいや。とりあえず試し斬りだ。なにか手ごろなものはないかな……」
俺はあたりを見まわした。
近くにいたゴブリンが叫ぶ。
「あ! あんなところに子供を襲うブラッディベアが……!」
「え……?」
すると、ちょうど、子供のゴブリンが遊んでいるところに、大きな熊が現れた。
いや、どんなタイミングだよ。
だが、ちょうどいい。
試し斬りにはもってこいの相手だ。
「俺に任せろ……!」
俺は、子供たちをかばうように、熊の前に躍り出た。
「うおおおおおおおお……!」
そして、聖剣を縦にふるう。
一直線に――!
――ズシャアアア……!!!!
――ズババババ!!!!
俺のほんの一振りで、目の前の熊は一刀両断。
そして、俺の斬撃は、遠くの地平線まで、ズシャアアっと消えていった。
斬った空間が、揺れ、地面はえぐれ、あたりの木々には傷が。
熊は真っ二つに割れ、その場に倒れた。
ものすごい威力だ。
「すげぇ威力だ……なんだこの剣……」
「すさまじい威力じゃな……。さすがはセカイ様じゃ。どれ、その剣に名前をつけてみてはいかがですかな?」
「名前かぁ……よし、じゃあ。聖剣ユグドラシルで……!」
さすがに安直な名前かと思うが、それしか思い浮かばなかった。
「聖剣ユグドラシル……その剣にふさわしい、すばらしい名ですな!」
俺は、世界に一つだけの、自分の武器を手に入れた。
ちなみに、その後のことだが――。
さすがに、ここまでの威力のものが出来上がってしまうので、ユグドラシル鋼を武器に使うのは、今後は控えることにした。
一応戦闘員ように、いくつか作ってみたが、それらをモッコロの商会に売って流通させるのは控えることにした。
あくまで、街の中だけで流通させるルールにした。
こんなバカげた威力の聖剣がぽんぽん作れたら、市場破壊もいいところだしな。
代わりに、ユグドラシル鋼で農具などを作ったりした。
斧や、くわなど、道具類をユグドラシル鋼でつくると、ものすごい性能のものができた。
おかげで、各種作業がかなり効率化したようだ。
さすがにそれも、街の中だけのものにする予定だ。
ちなみに、以前モッコロが売り出した、世界樹酒の治癒効果も、あまりにも高すぎて、そこそこ市場を破壊したようだった。
さすがにポーションなどとは競合しないように、値段や流通量には気を付けて売ったようだが、それでも医者の仕事を奪うことにはなったそうだ。
だが、それでも、俺は人々の傷が癒えるなら、それに越したことないと思っている。
だから、世界樹酒の流通に関しては、俺はとくに口を出さなかった。
だが、進化の実といい、世界樹のしずくといい、ユグドラシル鋼といい――。
俺の世界樹からとれる素材は、どれもこれも規格外なものだ。
今後も、外の世界にものを売るときは、いろいろと気を付けないといけないかもしれないな。
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