第31話 9つの聖剣だよ


 ドワーフのリダフのおかげで、俺は聖剣ユグドラシルを手にした。

 どうやらこの聖剣は、俺の魔力を流し込んで作ったものだから、俺にしか使えないようだ。

 リダフには、ユグドラシル鋼を使って、あと8本ほど聖剣を作ってもらうことにした。

 あまりにも多く強い剣を作りすぎても、外に流出したりしたときに大変だからな。

 この8本の聖剣は、それぞれの種族のリーダーに持ってもらうことにする。


 そうすることで、それぞれの種族のパワーバランスができて、街の平和が確固たるものとなるからだ。

 まず、ゴブリン族のリーダー、ヨークに聖剣をもってもらう。

 ヨークは聖剣に魔力を流し込んだ。

 すると、こんどは俺の持つ聖剣ユグドラシルとはまた別の姿に変形した。

 ゴブリンっぽいみための、緑色の聖剣になった。

 ヨークはそれに、聖剣ゴブリオンと名付けた。


 ワーウルフのリーダー、ジョナスも聖剣に魔力を注ぎ込んだ。

 今度は、獣のような見た目をした、ワイルドな見た目になった。

 聖剣は、ウルフファングと名付けられた。


 エルフの聖剣は、エルマと名付けられた。


 ドワーフの聖剣は、ドワルブヴルム。


 人間族の聖剣は、エクスカリバー。


 アラクネーの聖剣はアルネクリオン。


 スライムガールに与えられた聖剣は、スラムブリンガー。


 鬼狼たちの聖剣は、デュランダル。


 それぞれ、違った見た目の聖剣が与えらた。

 俺たちは、この9つの聖剣を、9始剣と名付けることにした。

 この街の防衛力は、この9つの聖剣でさらに強大なものとなった。



 ◇



 ある夜のことだ。

 ドワーフたちは、温泉に浸かりながら、酒を飲んでいた。

 街には、露天風呂もあった。

 ドワーフたちは湯舟につかりながら、べろんべろんに酔っ払っていた。


 リダフの手には、世界樹酒が握られていた。


「いやぁ、しかし。この世界樹酒はなんともすばらしいな。まるで体中の疲れがふっとぶ感じじゃ。それに、味もすばらしくうまい」

「まったくじゃ、わしなんか、腰の痛みが消え去ったわい」


 世界樹酒は、病気の人間すらも一瞬で治してしまうほどの効果だ。

 腰の痛みくらい、簡単に治ってしまう。


「おっと……」


 よっぱらリダフは、手をすべらせた。

 そして、手に持っていた世界樹酒を温泉の中に落してしまったのだ。

 じゃぽん。


「おおっと……」

「おいおい、酔っ払いすぎじゃねのか」

「すまんすまん」

「まあいいか、世界樹酒の風呂じゃ、がっはっはっは!」

「背中の痛みにより効くわい」


 リダフたちは、世界樹酒を風呂に落しても、さほど気にしていないようすだ。

 だが、のちにこれがとんでもないことになるとは、気づいていなかった。

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