第28話 ドワーフがきたよ


 ある日、夜中、街の中が騒がしいなと目が覚めた。

 なんか、誰かが酒盛りでもしてる……?

 いやいや、今日は祭りの日じゃないしな、そんなわけないよな……?


 俺は屋敷を出て、音のする倉庫のほうに行ってみた。

 すると、そこには知らないちっさいオッサンたちがいた。


「どわっはっはっはっは! そりゃあ傑作じゃなあ!」


 ちっさいオッサンたちは、酒を飲みながら談笑している。

 なんだこいつらは……!?

 すると騒ぎを聞きつけてきたのか、他の街の連中も起きて集まってきた。


「あ、ああ……高いお酒が全部……」


 マルクがそう言って肩を落とす。

 マルクはモッコロの商会の下っ端の青年だ。

 ちっさいオッサンたちは、倉庫の酒を片っ端から勝手に開けて飲んでいた。

 

「お、おい……! なんなんだお前たち……!」


 俺がそういうと、オッサンたちは眠そうに振り返った。


「あ……? なんじゃ? この街の者か……?」

「そ、そうだ……。俺は一応この街の世界樹をしている」


 そう答えると、オッサンは俺の肩をばしばし叩いてきた。

 なれなれしい……。


「がっはっは! すまんすまん、ついうまそうな酒の匂いがしてきたもんでなぁ! 酒には目がないんじゃ、わしらドワーフは!」

「ん……? ドワーフ……?」


 このちっさいオッサンたち、ドワーフだったのか……。

 ドワーフは酒を前にすると、飲まずにはいられないほどの酒好きだときくけど、本当だったとは……。


「あーあ……全部飲んでしまって……どうしてくれるんだよぉ……俺がモッコロさんに怒られる……」


 マルクはそう言って頭を抱える。

 それを見て、さすがにドワーフたちは申し訳なく思ったのだろうか。


「すまんのぉ……。そうじゃのう、お詫びと言ってはなんじゃが。いくつか道具を作ってみせよう」

「道具……?」


 すると、ドワーフたちは倉庫の中に、窯やらなにやらを展開し、即席の工房を作り上げた。

 どこにそんな窯を持っていたんだ……?

 アイテムボックスの魔法だろうか。


 そしてドワーフたちは鉱石や木材を取り出すと、金槌を打ち始めた。


 しばらくして、道具が出来上がる。


「ほれ、これなんかどうじゃ?」


 それはスコップだった。

 しかし、抜群に質がいい。

 モッコロの店で手に入るものよりも、さらに数段階上のクオリティだ。


「おお……! 確かにこれはすごいな……」


 それから、別のドワーフが作ったのは、トンカチだった。

 ドワーフのトンカチを見て、ゴブリンたちが感心する。


「ほう……これならさらに建築がはかどりそうだ……!」


 他にも、ドワーフたちは剣なんかも作ってくれた。

 クワやじょうろ、弓や槍も作っていた。

 どれもとてもじゃないが人間には作れないレベルでクオリティが高い。

 さすがはドワーフの仕事と言った感じだ。


「たしかにこれは、どれもすごいな……」

「どうじゃ、これで多少はお詫びになったかの?」


 ドワーフはマルクに問うた。

 マルクは道具を眺めて、満足そうに笑みを浮かべていた。


「これはすごいですよ……! この剣なんか、市場に出したらめちゃくちゃな値がつきますよ……!?」

「そうか、それはよかった」


 とりあえず、ドワーフたちに悪気はなかったようだ。

 まあ俺たちも道具を作ってもらって、そこまで損はしていない。

 酒はまあ、また造ればいい話だからな。


 ドワーフたちの道具を、街のみんなも気に入ったようで、すっかり打ち解けた。

 ヨークはドワーフたちを歓迎するつもりのようだ。


「どうだ、この際だ。みんなで酒盛りの続きをしないか?」

「いいのか……? かなり酒を飲んでしまったのだが……」

「いいさ、せっかくだから飲み干す勢いで飲もう!」


 みんな目が覚めてしまったので、そこから酒盛りが始まった。

 ドワーフたちの歓迎会だ。

 ドワーフのリーダーは、リダフという名前のようだ。

 リダフは酒を飲みまくって、すっかりいい気分になっていた。

 俺たちも楽しんだ。


「ほっほっほ! わしらはすっかりこの街が気に入ってしまった!」

「リダフ、せっかくだから、あんたらもこの街に住めよ!」


 ワーウルフのルークがそんな勧誘をする。


「いいのか? 本当に住むぞ? わしらはちょうど住むところを探しておったのじゃ」

「もちろん! あんたらの鍛冶の技術は、ぜひうちの街に必要だ!」

「よし、決めた! わしらはこの街に住むぞ!」


 ということで、ドワーフたち15名が仲間になった。

 これは、今後酒の生産量をさらに増やさないといけないな。

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