第20話 エルフがきたよ


「世界樹様に巣くう寄生虫たちめ……! 滅びなさい!」


 するとエルフたちは、なにやら大掛かりな魔法を唱え始めた。

 エルフたちの頭上に、大きな魔法陣が浮かび上がる。


「おいおいおい、ちょ、ちょっと待て……!!!!」


 俺は、思わずそう叫んでいた。

 すると、なぜか俺の一声で、エルフたちの動きが止まったのである。


「せ、世界樹様……!?」

「うえ……!?」


 エルフたちは感激した感じの目で、俺のほうを見上げてくる。


「まさか、俺の声、きこえるの……?」

「当たり前じゃないですか! 我々エルフ族は、世界樹様に選ばれし眷属。世界樹様のお声なら、世界中どこにいてもきこえますとも……!」


 おお……?

 なんか、エルフたちにはそのまま、俺の声がきこえるみたいだ。

 それに、エルフたちは俺のことを崇拝しているようすだ。

 よし、これなら話がはやい。


「ちょっと、えーっと、あのな」

「はい」

「喧嘩禁止」

「えええええええ……!? で、でもこいつらは……! け、獣ですよ……!?」


 エルフは見下した目で、ワーウルフたちを指さす。

 

「いいから、みんなここに住んでいるんだ。みんな俺の仲間なんだ。だから仲良くしてくれ」

「うぅ……世界樹様がそう言うのであれば……」


 ふぅ、なんとかなったな……。


「それで、お前たちエルフはなんのようでここに来たんだ? 世界樹の眷属とかっていうけど……今までみたこともないし……。どこからきたんだ……?」


 ききたいことはいろいろある。

 なんだか、エルフたちは世界樹がどういうものかについて、いろいろと知ってそうだからな。


「あれ? 世界樹様はご存じないのですか?」

「なにがだ……?」

「先代の世界樹様がお亡くなりになられたことです」

「へ…………?」


 せ、先代の世界樹……?

 お、俺の前の世界樹がいるのか……?

 てか、世界樹も死ぬんだ。


「先代の世界樹様である、ユシル様が先日お亡くなりになられたのです。なので、新しい世界樹様を求めて、我々ははるばる旅をしてきました。そしたら、すでに世界樹様の周りにこんな街ができていたので、驚いてしまったわけです。さきほどはみなさんにご無礼な態度、失礼いたしました」


 エルフたちは、ゴブリンとワーウルフに向かってぺこりと頭を下げた。


「世界樹がなくなったって……てか、そもそも世界樹ってなんなんだよ? そんな世界に何本もあるものなのか?」

「いえ、世界樹様はこの世に一本きりです。えーっとですね。この世界で一番大きい木が世界樹となるのです」

「はぁ」

「なので、今の世界樹様が世界一の大きさになったので、先代の世界樹様は枯れてしまったのです」

「えぇ……!? じゃあ、前の世界樹死んだの俺のせいじゃん……!?」


 世界樹はこの世界に一本しか存在できず、新しく巨大化して、世界一を抜かれたら、先代の木が枯れる……。

 ってことは、俺が世界一の木になってしまったせいで、先代の世界樹が枯れてしまったってことになる。

 それはなんだか、申し訳ないような……。


「あ、いえ。世界樹様が悪いわけではありませんよ。それがこの世界の理、決まりですので。新しく世界樹様が現れれば、前の世界樹様は枯れてしまう。それは当然のことなのです」

「そういうもんなのか……? でも、その割にはゴブリンたちは前から俺のこと世界樹様とか呼んでたような……?」

「きっと彼らは、世界樹様が次の世界樹様になることを予感していたのでしょう。先見の明というやつです」

「そうか……?」


 すると、エルフたちは一列に整列し始めた。

 そして、みんなで俺にぺこりと頭を下げてくる。


「というわけで、我々エルフ族はこの街でやっかいになります。よろしくお願いします」

「いや、俺はいいけど、ゴブリンたちはいいのか?」


 ミヤコとリンダの子供、ヨークに尋ねる。

 ヨークはミヤコの子供ということもあって、俺の言葉がわかった。

 ヨークは35歳くらいの青年のゴブリンで、街のリーダーだ。


「俺たちも、世界樹様の眷属であるエルフたちを追い返すわけにはいきませんよ」

「そっか、なら。みんな仲良くしてくれよな」


 ということで、エルフたちが仲間になった。

 一時はどうなるかと思ったが、一件落着だ。

 エルフたちは世界樹に関する情報をいろいろ知っていそうだし、これからも頼りになるだろう。


「右から、エル、エリン、エリナ――」


 エルフたちは自己紹介をしていくが、みんな似たような名前で覚えられない。

 それに、みんな整った顔で、あまり特徴がない。

 正直言って、エルフの区別つかねぇ……。


 エルフたちはみな、かしこかった。

 それに魔法が堪能だ。


 最初はワーウルフやゴブリンとうまくやれるのか、心配だった。

 しかし、すぐにエルフたちは街の中で仕事を見つけて、居場所をつくっていった。

 なにより喜ばれたのが、エルフたちの使う生活魔法だ。


 生活魔法のおかげで、みんなの生活はかなり楽になった。

 火を起こすのも一瞬だ。

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