第8話 蜘蛛がきたよ


 俺もかなり大きくなって、10メートルほどになっていた。

 順調に成長している。

 とはいっても、まだまだ問題はたくさんある。


 まず、暇なのだ。

 これが本でもあればいいんだけどなぁ。

 モッコロに言って本でも持ってきてもらえればなぁと思うのだが、まあ、こちらから言葉を伝える手段がないからなぁ、どうしようもない。


 他にもいろいろ問題はある。

 まず冬めっちゃ寒い。

 普通に雪降るし、でも防寒具とかないから普通に寒い。

 なんなら冬以外でも雨の日は普通に寒いぞこれ。

 木になんかなったことなかったから、考えもしなかったことだ。


 それから、一番の問題は虫だ。

 これほどの巨木になると、俺の身体に住んでいる虫はかなりの数になる。

 正直いって、かわいい虫ならいいけど、気持ち悪い。


 いやまあ、虫さんだって住む場所が必要だろうから、住んでくれるのはまあいいんだけど。

 でも、身体を這いずり回られるとさすがに気持ち悪いのだ。

 身体じゅうがぞわぞわする。


 なんとかならないかなぁ……そう思っていたころ。


 ある日、俺のところに大きな蜘蛛のモンスターが現れたのだ。

 こいつはケイブスパイダーだな。

 モンスターの名前などはだいたい聞きかじったりして知っていた。

 こう同じところに何年もいると、いろいろと物知りにもなるもんだ。

 俺の木の下で世間話をする村人も珍しくなかったからな。


 でも、ケイブスパイダーが洞窟から出てくるなんて珍しいな。

 普段は洞窟から出てこないモンスターなんだが……。

 洞窟でなにかに追いやられたのかな。


 スパイダーたちは俺に住むことにしたようだった。

 俺の木枝の間に巣をつくったりしていた。

 まあ、それは別にいいんだけど。


 新しい住人は、意外なところで役に立ってくれた。

 なんと、俺の身体をはいまわっていた気持ち悪い虫を、全部食ってくれたのだ。

 蜘蛛は益虫ていうけど、ほんとなんだな。


 俺はお礼に、蜘蛛たちに実をたくさん食わせてやることにした。

 蜘蛛も木の実ってくうんだな。

 実を食ったケイブスパイダーたちは、フォレストスパイダーに進化したようだった。


 さらに、冬になってうれしいことがあった。

 なんと俺が寒そうにしていたところ、フォレストスパイダーたちが俺に布を作ってくれたのだ。

 あたたかい巨大な布を、木の幹を覆うようにしてかけてくれたのだ。

 なんて優しいいんだ……。


 蜘蛛さんたち、ずっと俺のところに住んでいいからねぇ……と優しくなってしまう俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る