第6話 トカゲがきたよ


 またまた俺のもとになにかがやってきた。

 どうやら俺はいろんなものを惹きつける性質があるのかもしれない。

 まあ、動けないからいろいろやってきてくれるのは、暇がまぎれていいんだけど。

 こう何年も同じところに突っ立っていると、そりゃあいろいろな客がくるわな。


 今回やってきたのは、お腹をすかせたトカゲだった。

 トカゲはのろのろとやってきて、俺の木の根元にぐたりと座り込んだ。

 どうやらお腹が空いていて、これ以上動けないらしい。

 しょうがない。

 俺はトカゲのもとに、実を落としてやることにした。


 最初は警戒していたが、トカゲは実を一口食べると、あっという間に完食してしまった。

 まだお腹がすいてそうだったので、実をいくつか落としてやる。

 トカゲはそれらを全部食べつくした。


 するとトカゲはリザードマンに進化した。

 二足歩行の半分トカゲ頭の、半人だ。

 リザードマンとなったトカゲは喋れるようになったみたいで、俺に頭を下げてきた。


「これは世界樹様……お助けいただきありがとうございました」


 どうやら初対面のやつにも世界樹様と呼ばれるんだけど……。

 俺が世界樹だってどこかに書いてあるのかな?

 俺の魔力から世界樹だって判断してるとか?

 わからない。


 お腹いっぱいになったトカゲは、なにかお礼にと、考えだした。

 そして、一つの巨大な宝石をどこからともなく取り出した。


「お礼といってはなんですが、こちらを置いていきます。これはドラゴナイトという宝石で、トカゲの体内で長年かけてつくられる特殊な魔法鉱石です」


 トカゲはそういって、木の根元に宝石を置いていった。

 こんなもの置いていかれても、俺にはなんにも使えないんだけど……まあいいか。

 気持ちだけでももらっておこう。


 

 ◇



 それからしばらくして、今度はお腹をすかせた商人がやってきた。

 どうやら商人はキャラバンからはぐれて、道に迷ったようで、とても疲弊しきっているようすだった。

 お腹をすかせて、死にかけている。


「おお……神様……どうかお助けください……」


 商人は俺の根本までふらふらとやってくると、そこで力尽きるようにして倒れた。

 うーん、このままここで死なれるのも寝覚めがわるい。

 俺は神様じゃないけど、助けてやるか。

 俺は商人の目の前に実を落としてやった。


「こ、これは……幻覚か……?」


 すると商人は最後の力を振り絞って実を口にした。

 すると商人は一瞬で元気になり、歩けるようになった。


「おお……! なんだこれは……! 本当に神様が助けてくださったのか……。このご神木には感謝だな……」


 商人は感謝の意を込めて、俺の幹を数度撫でる。

 そして、俺の根本に置かれている例の宝石に気づく。


「こ、これは伝説のドラゴナイト……どうしてこんなところに……!」


 お、これはちょうどいい貰い手だな。

 俺にはドラゴナイトは無用の産物だけど、商人に持って帰ってもらえばさばいてくれるだろう。


「ご神木様、これ、頂いてもよろしいでしょうか……?」


 商人が律儀にそうきいてくるので、俺は木を揺らして応える。


「いい……ということですね……? ありがとうございます」


 それからしばらく木の根元で休憩して、商人はドラゴナイトを持って去っていった。

 あの商人が無事に街までたどり着けることを祈ろう。

 

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