第4話 山田花子です
とりあえずの一杯の麦茶を飲む。
「で?アンタはいったい誰なの?そもそも色々起き過ぎて忘れてたけど、初対面の人を地面に叩きつけてきたの今思い出したわ。なんか腹立ってきた、テメェ、このやろう」
山田に襲いかかろうとしたところで目の前から山田の姿が無いことに気づく。
山田の姿が無いことに脳が気づく前に山田にチョークスリーパーを極められていた。
「時間考えな」
「はい」
チョークスリーパーから解放される。
「あのー、一体あなたはどなたなのでしょう?」
山田は口で説明する前に名刺を手渡してきた。
「それではあらためて。私は国家生命委員会の山田花子と申します」
「役所かよ」
「そういえばあなた名前は?」
「あ、笹宮ゆかりと申します」
リビングの隅に置いておいたリュックの中身をゴソゴソと探して名刺入れから名詞を取り出して山田に渡す。
「これはご丁寧にどうも」
「いえいえ」
お互いに名刺交換を済ますと山田が話を再開する。
「それでですね。笹宮さん」
「ゆかりんって呼んで」
「ゆかりんは12省庁というものはご存じでしょうか」
「大蔵省とか防衛庁とか?」
「ちょっと違いますけどまあいいでしょう。それです。そして国家生命委員会はその”13個目の省庁”です」
あれ?この人12省庁って言ってませんでした?
「あれ?この人12省庁って言ってませんでした?って顔してますね」
「うあ。また読み取ってきた。えっち」
山田が立ち上がってこっちに歩いてくる。
拳骨で殴られた。
私がちょっとぷっくり膨らんだたんこぶをさすっているのを横目に山田は元の場所に戻る。
「それじゃあ、あなたの誤解を解くところからいきましょうか」
「はい…。お願いします…」
「まず、あなたの考えていることは正しいです。日本の省庁は”表向き”
には12省庁ということになっています」
「はい」
「そして私の所属している国家生命委員会はそれとは別枠に設置されているものとなります。つまり、日本には実質的には13省庁あるということになります」
「はい」
「ですが、この13個目、国家生命委員会は”存在しない”省庁ですので、当然のことですがそこにいる職員も存在しない訳です。なので私も偽名を使っています」
「それじゃあ山田花子なんて役所の見本みたいな名前じゃないんだ」
「当たり前でしょう。そんな名前芸人くらいですよ」
2人で顔を合わせながら大笑いする。
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