入学式あるいは修学旅行(2)

 君達を騙していたのは僕の色彩が、ごめんなさいをすべき人達にとっての赤や青や、ごちゃ混ぜのグロテスクが何によってグロテスクかを便宜的に決めておいたから。それ以外は見向きもされなかったのだけれど実のところ、全部は全部皆グロテスクなので、もう一度目を開けば君は吐いていてもおかしくないのに、吐く仕方を忘れているから悲しいんだね。だから僕が吐いてみせる。一度だけ。おろろ。

 「ほら、シルバーはぎりぎり許せる。これは僕の力不足によっては、未だ色として説明してしまえないの。」

 「このアクリルは…」

 「え?そんな色はどこにも無い。」

 はい。彼女は透明であった。今まで彼女について何を言ってきたか、そんなこともきっと無かっただろうということで、今より彼女を説明しないどころか、彼女はいないとは全く正しい。

 じゃあこっちの彼女について、これは肌色だから気色が悪いので言いたくない。

 こっちの彼女、銀というよりはくすんだ白。ああこれは、知らなかった。今知った。

 「ねえ君、」と思ってもみない興味を幸運と知って言い掛けた次に、全く当然の見返りに背中を刺されて倒れ込んだのは、それでも若干寂しかった。


 「言ってなかったっけ。」

 いいや。言っていた。私のではないが充分に感触可能の普通の部屋において、現時点で私のベッドは目を覚まし、窓より覗く気泡を数えて朝食に与る。

 どういう訳か、ミシミシと言わないそのことだけによって、この空間が水圧に倒れるという心配も、やはりその字面によっては見出せない。

 お分かりだろうが言っておく。水は有る。水色をして私を面白がっている。

 「でもね、これは君の思っている様なシンプルな青ではなかったはずなんだよ。」

 「じゃあ何だ。私は私のガラスの色合いによって、言う必要の無いその色をいつまでも水色として有り難がっていたというのか。」

 「言う必要の無いのは色でなくて水の方です。前にも言ったでしょう。」として、朝食を終える。

 やはり彼女達は複数で、いつか言い終わったとしてまた顔を覗かせるべき驚異的な実体であるから、分かるだろうが私は現にそこにいないのである。

 まだ普通の体の運動、歩行だとかを言い始めてしまう程、時間の貯蓄は無くて、つまり気付かぬ内にはあの懐かしの病も、つまりは馴染みの無い慣習を復活させる様相でもなかったのである。

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