第26話
急に女の子に声をかけられ、ちょっとだけドキドキしてしまったが、俺はゆっくりとペダルをこぐ。
ああいうやりとりがきっと青春っていうんだろうな。
などと偏見に満ちた事を考えながら自転車
をこいでいた。
しかし、放課後になってあの美怜の強烈な視線を感じない。
そう美怜の視線だ。
彼女はどこへ行ったのか?
別に寂しいとかじゃないよ。
ずっと見られるというのは以外とストレスになるもんで、俺はようやく解放されたと思った。
しかし、いろいろと人生というのは高校生で悟るのは早いが、裏切る物だと俺は知ることになる。
解放感から自転車をゆっくり漕いでいると、後ろからバイクのような音が聞こえ、俺は道
の端による。
バイクは俺の横を通り過ぎようとしていた。
ドラムの音のような排気音とエンジンの音が聞こえてくる。
その音が段々と小さくなるとバイクは減速し始め、俺の横に並走するように走る。
俺はなんだと其方の方を見る。
そこには黒いアメリカンスタイルのごついバイクに跨がった、カウボーイがいた。
いや、カウボーイ?
馬じゃねぇのかよ。
そう思いながら俺は二度見した。
それに違和感はそれだけではない。
顔はよく見えないがカウボーイはゴーグルを目につけ、頭にはカウボーイハットを被りながら、さらにその上に小さなヘルメットを載せていた。
いや、カウボーイハットとれよと俺は一瞬、心の中で、突っ込んでしまった。
だがこれはかなり危険なフラグだ。
おれはそう思った。
完全に触れちゃ行けないやつだ。
そうこれは死への道。
俺は気にしないで自転車を漕ぎ続け、前方だけをむくことにした。
そんな俺にカウボーイは声を書けてきた。
「ヘイ、君はテルマ・サイトウだろ」
カウボーイはバイクを運転しながら、質問を浴びせてきた。
俺はきこえないふりをしながら、自転車を漕ぎ続ける。
逃げようにも、相手はバイクだ。
完全に逃げようとしても確実に追い付かれる。俺は内心、どうしようか迷いながら、自転車の漕ぐスピードをゆっくり上げていく。
「ヘイ、無視するなよ! Can YOU hear me?」
俺は横目で、バイクの方をチラリと見る。
カウボーイは金髪の外国の方でかなり端正な顔立ちをした人。
どこかで俳優でもやってるのかなと思うほどだった。
しかし、かなりヤバい奴だとビンビンに肌で感じている。
そう無言で自転車でペダルを漕ぐ俺を他所に、バイクのカウボーイは続けた。
「ミスター平田から聞いたぜ! 【ネイキッド・タイガー】の信望者なんだろ?」
カーボーイはさぞ嬉しそうに叫ぶように言った。
ほら、きた。
ヤバい人たちの集団がここまで近くまでくるとは思っても見なかった。
俺は無視をしながら必死で自転車を漕ぐ。
「Hay BOY。 無視するなよ」
カウボーイは陽気な雰囲気で言ってはいるが、どこか圧を感じるのは気のせいか?
俺はそう考えつつも、無視を決め込み、どこかで素速く距離を取れないかと考えていた。
しかし、行けど曲がれそうな所はない。
曲がったとしても、結局、細い道が続き、追い付かれてしまう。
こうにも考えている内に周りの通行人がこちらに視線をむけながら、通り過ぎていく。
通行人の中にはきこえる声で「あのカウボーイ、馬じゃなくてバイクに跨がってるぞ?」と言う輩もいた。
いや俺もさっき、つっこんだばかりだし。
それに馬できてたら、更に注目されちゃうでしょ。
俺は内心で、見知らぬ人にツッコミを入れながら、こぎ続ける。
「そうか、君がそういうことなら」
バイクに乗ったカウボーイはバイクを低速で運転しながら、片方の腕にリボルバー型の銃を抜き出した。
「うぇっ」
俺は横目でみて、思わず自転車ごと転倒仕掛けた。
まさか、銃が出てくるとは思ってもみなかった。
いやいや、そんな物騒なものをこの街中でだしちゃダメでしょう。
俺は恐怖と、焦りを憶えながら、ペダルはこぎ続ける。
「ミスター、平田に言われているんだよな。
無傷で君を連れてこいと」
カウボーイはニヤリと笑いながら、言った。
この状況は本当にまずい。
つーか、なんでこんな情況下が続かないといけないのか。
俺は自分の不幸さを恨むに怨みたかったが、それをすることはできない。
俺は、必死でペダルを漕ぎ続ける。
あきらめが悪いのはわかっているがそれはそれだ。
「本当に往生際が悪いな」
カウボーイは俺にきこえるように言った。
俺はカウボーイの方をみることなく、自転車をこぐ。
とにかくこの場から離れなければ。
必死でペダルを漕ぐ俺の後ろではバイクの排気音がきこえる。
俺は一瞬だけ、後ろをふり向いた。
カウボーイが銃をこちらに向けていた。
本当にヤバいぞ。
俺がそう感じた瞬間だった。
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