第24話
「もうそろそろ教室に戻るとしようか」
俺がいいきり、奥谷の方を向いたはずなのに、その奥谷の姿がなくなっていた。
「あれ?」
俺は辺りを見まわした。
すると奥谷はすでに、こちらにメンチを切っていた美怜に向かいスキップでもしているかのような足取りで、近づいていた。
「お、奥谷!」
奥谷は近づき、声をかけて何かを話していた。すると
美怜はスッと立ちあがるとなんの動作もなく、奥谷の胸ぐらを掴み何かを言っていた。
やられている方の奥谷は、首をものすごい勢いで縦に振っていた。
「お、奥谷」
俺は奥谷を心配し、ちかづいていく。
すると美怜は俺の存在に気が付いたのか、苦虫つぶしたような顔をすると奥谷を解放し、校内へとある行ってしまった。
「おい、奥谷、だいじょうぶか?」
俺は呆けて立っている奥谷に声をかけた。
「下手に刺激すると……」
俺は奥谷の表情をみて驚いた。
奥谷はどこか幸福そうな顔をしていた。
「お、おい」
俺は訳がわからず、奥谷の肩をつかんだ。
「どうした?」
「い・・・・・・」
「い?」
「いい」
「いい?」
奥谷は目を輝かせて、笑顔に変わった。
「な、何がいいんだ?」
恐怖で、頭のねじが一本飛んだのかと思うほど脈絡のない奥谷の恍惚。
「彼女のあの強気な感じ。 俺は好みとしては最高だ」
奥谷はまるでこの世でいちばん美味しい物を食べたような顔をしていた。
「そ、そうか」
俺は奥谷の言葉を聞いて、肩から手を離した。お前、マゾの気があったのかと問いかけたかったがこれは人の性癖に関するものだから関わらないでおこう。
真剣に考える俺に対し、奥谷は魔法にかけられたように呆けた顔をしながら言った。
「なぁ……」
「なんだ?」
「もし、あの子と仲よくできたら、俺に紹介してくれ」
「お、おう。期待はすんなよ」
奥谷の言葉に俺は引き気味で答えた。
まさか友人にも変態がいるとは思っても見なかった。
俺は屋上から見える景色に目をやり、現実逃避をした。
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