第23話

「で、テルーよ。それがこの前の藤倉恐喝事件のあらましか?」

奥谷は野菜ジュースのパックを飲み干すと、俺に問いかけた。

「そうだよ。本当にひどい目にあった」

俺はパンをかじりながら、悪態をついた。

「じゃあ、俺は無実ですといった後、結局、一人で職員室に行って藤倉と話しのか?」

奥谷は他人事だと思い、面白おかしく聞いていた。

「本当にさんざんだった」

俺はパンをかじり、当時の状況を思い返してみる。

彼女がああやって嘘を着いたせいで俺は結局、職員室には一人で呼び出され、説教、および、、愚痴なるものをさんざんと聞かされた。

正直、耳栓をし、聞きたくなかった大人の事情みたいなことまで耳に入ってしまった。

そんなHPが零の状態でなんとか回復し始めてきている状態だった。

「本当に俺は無実なのに、ひでぇよな」

俺は泣き言をいう。

奥谷は眉間に眉をひそめながら、訳がわからないといった顔をする。

「しかし、だな。 出会ったばかりのお前とあの恐喝をした転校生が仲がいいのか気になるところだ。そしてそれはクラス、いや、学年、いや、全校生徒の疑問だ」

奥谷は自身の携帯を取り出し、音声の録音を始めようとする。

「撮る必要はないだろ」と俺は疲れ気味で行った。

奥谷と俺は仲はいいが、クラスは違うため、話はまだ完全に理解して居なかった。

「それに話を盛りすぎだ。全校生徒が気になっていたら、俺は三百人以上から質問をうけなきゃ行けなくなる。それに噂なんてどこからきてるんだ?」

俺は奥谷に、問いかけた。

「情報の出所か? それは企業秘密だから教えられないんだな」

「又それかよ」

俺は残りのパンをかじり、咀嚼した。

「それに、気になることがある」

「なんだ?」

「噂をすればとは言いたくないが、さっきからなんで、転校生、数メートル離れてこっちにむけてメンチ切ってるの?」

奥谷は苦笑いをしながら、あははと言った。

俺は奥谷が言った方向をチラリと向く。

数メートル離れたそこにはヤンキー座りを

しながら、コーラを飲んでいる美怜が此方を睨んでいた。

しかもすごい目つきをして。

確かに監視しろと言われているんだろうけど、そこまでやる必要、いや、隠れてできないものなんだろうか?

俺は首をかしげて、奥谷に向き直り、言った。「俺がその理由を聞きたいくらいだよ」

俺は自信の飲み物に口をつける。

「でもよ。 テルー、あそこまでメンチ切られるとか俺は知らないけど、何か悪いことでもしたんじじゃないのか?」

奥谷は疑うような目でいう。

「いやいや、そんなことしてたら今頃、この世界には俺という存在がないだろ」

俺は奥谷の疑いを一蹴した。

「しかし、あそこまで殺気だってメンチを切られるなんてなかなか無いことだぞ」

「いや、そりゃあ、普通に暮らしてたらあり得ないことだと俺だって思うよ」

俺は全く同感だといいたくなる。

だがあの光景、あの現場に居合わせてしまえば、普通に暮らすことは難しくなりそうだ。

奥谷は溜息をついて、言った。

「てっきり俺は、子供でも作って逃げてきたのかとおもったぜ」

奥谷は手を広げて、やれやれとわざとらしく、言った。

「お前、楽しんでないか?」

「そんなことないぞ。 せっかくのマイフレンドが困って居るんだ。 俺は心配でしょうがない」

奥谷は片方の唇を持ちあげ言った。

やはりこいつは面白がっているなと思った。

俺は目をつぶり、自分の頭に額を当てた。

瞼を閉じるとやはり浮かんでしまう。

レオタードをきた、あの平田という人物の顔が。

俺も同種になると考えるだけで寒気が止まらなかった。

だがまだ確率は低いだけだ。

完全に変態になるわけじゃない。

俺はだいじょうぶだ。

自分に言い聞かせる。

俺は瞼を開けて、奥谷の方をむきながら言った。

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