第21話

「な、なんだよ」

俺は急に彼女の雰囲気に飲まれそうになるが、抵抗の意志を少しでも見せる。

美怜は黙ったまま、俺の前で立っていると、急に手を伸ばし、俺の顔を右手でつかむ。

痛いという前に彼女は、口を開く。

「うるさいわよ。 ちゃんと返してあげるから吠えない事ね。 もしつぎ吠えたら、アンタの○○を●●して●●しちゃうから」

美怜はかなり放送禁止用語を連発し、彼女の姿からは想像もつかないFワードてきな物がでてきた。

俺はそんな彼女に驚きつつも、口元を掴まれながら返事をした。

「ひゃ、ひゃい」

はいと言いたかったが、蛸みたいな顔をしているため返事が変になってしまった。

「ふん」

まるで悪役のボスみたいに吐き捨てるように鼻をならし、美怜は後ろを向いた。

「君の自由は完全にはないと思ってくれ。 今回、本当に君を治療する薬ができない限り、完全な自由は約束されない」

「その完全な自由はないってどういうことですか?」

俺は大佐が言ったことに質問をしてみた。

大佐は迷うことなく俺の言葉の後に続けた。

「簡単に言えば、君は美怜、または当局によって常に監視がつきまとう。 プライベートゾーンの一部を除き、君は観察対象になってもらう」

「ということはトイレや風呂以外はほぼ、行動が監視されるということですか?」

「そういうことになる。君には人権という名の物が、建前は存在してはいるが、君が変態【メタモルフォーゼ】したときにはこの国からも抹殺対象になる」

まじかよ。

大佐の言葉に開いた口が塞がらなかった。

なんでといわれたら、もし変態【メタモルフォーシス】してしまったら、社会的にも、いや、完全な死が待っているという事実。

いや、お先真っ暗すぎて逆に笑えてきた。

「安心したまえ、君は監視はされるが、完全にある程度の範囲の行動は許される」

大佐は安心したまえというが安心できる事態ではない。

正直、もう泣き出したいくらいどうして良いのか分からない。

わからなすぎて本当に笑ってしまいそうになる。

「行動は一日中監視される。家の周囲は他のメンバーが担当するが、君が日中、学生と過ごしている間は美怜が君の監視につく」

大佐が淡々というとすぐに美怜が反応した。

「ちょ、ちょっとまって大佐。 確かに彼を監視するって命令は受けたけど、日中、一緒にいるということは校内でも一緒にいろってこと?」

美怜は完全に嫌そうに言った。

「そうだ。 君の目が届く範囲でいい。 そう目の届く範囲で」

大佐は一度、いうとまた再度言い直した。

何か、変な意味でもあるんだろうか。

俺は大佐と美怜を見ながら思った。

「ということは完全に……」

美怜が途中で言葉を切ると、大佐がそれに続けるように言った。

「そうだ。 完全に学校も一緒になってもらう」

「えええええーーーーーーーーーーー」

美怜はかなりの大声をだした。

叫びだしたいのは俺の方なんだけどなと思いつつも、黙っていた。

「本当に近くまでいなきゃいけないの?」

大佐は無慈悲にも首を縦に振った。

美怜はさっきの自身はどこえやらと言う形で、肩をがっくりとおとした。

完全に漫画とか、アニメでみるような落ち込みかたをしていた。

まるで嫌いな奴とクラスが一緒になってしまったやつみたいで、変だった。

「ということでこれからは我々の指示に従ってくれたまえ、斎藤君」

大佐は手を組み、真っ直ぐに俺を見ると言った。

「は…はい……」

俺も美怜のようにうなだれ、完全に休んでいる類人猿のような格好をしていた。

ああ、こんなことになるなら、コンビニに行かなきゃよかったと後悔し、俺は溜息をついた。

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