第20話
「こんなやつのお守りをするんだったら、変態になったほうがマシ!」
いや、そっちのほうが精神的なダメージ大きくないか?
俺は冷静に考えながら、美怜の叫びを聞いていた。
目の前の大佐は顔色一つ変えることなく冷静にいった。
「美怜、気持ちが分かるが落ち着け」
気持ちが分かるって、俺ってどういう存在なの?
地味に傷付く俺を他所に、大佐は言った。
「自分の望んでいないことだと分かるが、美怜、君が言って居ることは重大な規律違反になるが、それでもいいのか」
大佐は優しく淡々と言いつつも脅しを含んだ刀のように鋭い切れ味の言葉を放った。
「そ、それは…………」
美怜は改心の一撃を食らったのか、言葉に詰まる。
いや、そりゃそうだよな、彼女にしてみたら、規律違反という言葉は多分、死刑宣告に近いようなことなんだろう。
俺にしてみたら、規律違反という言葉はただのパワーワードにしかきこえないが。
「いいか、彼がどんな人物かは手元にある個人情報でしか分からない。ただもし彼が社会を脅かすような重大な変態に変化するときは君の判断に任せる」
大佐は隻眼で言う。
判断に任せるということは、俺が変態になったら命がないとでもいうことだろうか?
「ただ、今回の命令が聞けないという事であれば、君はそく組織から除名になるがいいか?」
大佐は隻眼を鋭く光らせながら、美怜を見据えていった。
「…………」
美怜は唇を噛み、下をむき、黙り混む。
数秒して美怜は顔を上げて言った。
「分かりました。 こんなことで根を上げていたら、アイツにはたどり着かないし」
アイツ……?
美怜が言った言葉に疑問を感じる。
何か、恨みでも持っている人物がいるのだろうか?
俺はどうでも良いことを疑問に浮かべつつ、そのまま、様子をみていた。
「それにこんな事で、つまずきたくないし」
美怜は強い目をして大佐に言った。
大佐と美怜は数秒間だけ見つめ合う。
なんだか、映画のいいシーンみたいになっていた。
何、この展開?
俺は素直にそう思った。
内輪ネタにおいて行かれるやつの気持ちが分かった瞬間はどんなときかと言われたら、きっとこの瞬間と答えるだろう。
蚊帳の外なのは俺と、スマホを弄る.付箋文と呼ばれた彼女くらいだ。
そう考える俺を他所に美怜は続けた。
「で、大佐。私はどうしたらいいの?」
美怜はさっきとうってかわり自信満々の顔をしながら言った。
ドヤ顔しているみたいで、かなり自信家なんだと俺は思った。
「彼を観察、および時が来たらそのときは分かっているな」
大佐は何か、含みを持たせるような口調で言った。
本当に怖いんですけど。
俺は恐怖におののき美怜の方を見る。
美怜は知っていることを言わなくても分かるわよという感じで、口を開いた。
「もちろんよ。つまり彼を経過観察、もし変態になるようだったら、海にチンすればいいのね」
俺は驚き、思わず目を見開いて仕舞う。
いや、彼女は俺のことを冷えたご飯を電子レンジでチンするみたいな感じで言ってるけど、それは完全に沈ませる方のことだろ。
「そうだな。海はともかく、山よりはいいな」
大佐はふむといった感じで、顎に手を当てながら、思考するように言った。
いや場所の問題か?
そういうことじゃないと思うが、俺はようやく声を上げた。
「いや、俺、変態になって殺されるような雰囲気だしてるけど、まだ変態【メタモルフォーシス】してないし、【デスヌード】の仲間とやらにもなってない。 いい加減、家に帰してくれないか」
俺はその場にいる全員に伝わるように叫んだ。正直、もういい加減、腹も減ったし、風呂にも入って寝たいわ。
そう思い、早く帰らしてくれという願いを込めて言った。
俺が抗議の声を上げると、全員が此方をむいた。
すると美怜がこちらをむき、睨みながらつかつかと歩み寄る。
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