第18話

軍人さんは俺をジッと見ると、口を開いた。

「そういえば私の名前を教えていなかったな」

「確かに。名前を聞いてはいなかったです」

軍人さんは一回呼吸すると、言った。

「私の名前はアーノルド・アームストロング大佐だ。大佐とでもよんでくれ」

軍人さん、もとい、アーノルド大佐は笑うことなく、言った。

やべえ、アが二つも頭文字でつくし、すでに名前だけで、腕っ節が強そう。

俺がそんなことを考えていると、アーノルド大佐は口を開いた。

「君がここに連れてこられた理由を率直にいおう。君は【メタモルフォーシス】する際にかかる、特殊なウイルスにかかっている」

「は……?」

俺は一瞬、理解できずに、聞き返してしまった。

「言葉の通りだ。 君は平田に接触した際に感染したと思われる。この変態ウィルスは感染力が強く、一人いるだけで、その変態度が広まっていく。 非常に厄介なウィルスだ。

そのため、一人が持っていると、もの凄い数で爆発的に増えていく傾向にある」

アーノルド大佐は淡々として説明しているが、完全にやばいことじゃないか。

というかゾンビかよ。

変態ってそんなにいるの?

そのうち、みんなおかしくなるぜ。

俺は大佐の話を聞きながら、思った。

「それはつまり……?」

「変態のパンデミックだ」

大佐は大まじめな顔で言った。

この人は冗談を言っているのではないかと考えてしまうがこの情況下でそれは言うことはできない。

「変態のウィルスは消滅させることはできない」

「ってことは完全にウィルスを滅ぼすことはできないということですか?そしたら俺は、、完全に変態になるということですか?」

「そうなるな」

俺はまるで死刑宣告をうけたかのように思えた。頭が真っ白になり、俺がいつか歩く人間変態になってしまう。

街中で醜態、いや羞恥を晒すとなると心が痛くなる。

あの人変態よ。

生ゴミを見るような目をした通行人にそう言われる未来を想像しただけで、恥ずかしさだけで死にそうになる。

「止める手立てはない。だが可能性はある」

大佐は淡々と続け、絶望に捉えわれそうになる俺に、

「どういうことですか?」

「つまり病気のように進行を抑えることは可能だ。その間に普通の人間に戻す方法をさがすということだ」

大佐は真っ直ぐ俺に向き、事実だけを述べていた。

「でも薬とかあるわけではないですよね」

「そうだ」

「どうやって進行を抑えるんです?」

「変態【メタモルフォーシス】は発作のような物が時折、見受けられる。発作の際に「止めることが出来れば、進行は抑えられ、発症までに、時間ができる」

「でも、薬がないのに、どうやって発作を抑えるんです?」

俺が疑問を口にすると、大佐は迷うことなく口をひらいた。

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